from Japan

メイクを教え、メイクから教わる。

福井美余 パーソナルメイクアドバイザー

▼Profile

福井美余 Miyo Fukui パーソナルメイク アドバイザー

美容専門学校で美のプロの育成に携わる一方で、一般女性向けのメイク講座を開催。

延べ1万人の受講生を持つ、半年先まで予約の取れない人気メイク講座として知られている。今まで購入したコスメの総額「都内のマンション1つ買えるくらい」という、究極のコスメマニアとしての知識を、ブログで書きはじめたところ、話題となりアメブロ美容部門1位を獲得。フォロワー数13000名という人気メイクブロガーとして圧倒的な人気を博す。メイクを通して女性を輝かせたい!!との思いから、日本パーソナルメイク協会を設立し、メイク講師の養成に力を注いでいる。

ホームページ https://excess-beauty.com

私はメイクスクールをやっていてメイクを教えています。

メイクアップアーティストさんの養成ではなく、一般女性向けのベーシックなメイクや、そういった教室を将来始める先生を育てているんです。

メイクのミラクル

私にとってお化粧は自信をくれるもの。ちょっと自信がないときでもこうなりたいっていう自分に近づけるから“いいな”って思います。

メイクをしていると、少しずつ自分の顔に親しみが湧いてきて、メイクで自信をつけていたはずなのに、メイクを落とした顔も少しずついいなって思えてきたんです。そしていつの間にかメイクを落としても自信がキープ出来ている自分がいました。

外に行くときは必ずお化粧しますが、家ではしてないときが多いので、そんな素顔は自分のためにあるんですね。“あっ、今日は調子いいな”とか。

素の自分が好きになってくると、自然に不必要な厚化粧からは離れていきますね。今度はおしゃれの一つとしてすっぴんに近い感じで出かけてみたいなって思っています。

このサンローランの19番は、私が16の時に初めてつけた口紅。

父親のプレゼントだったのですが、彼の思い出っていうところもあって特別なものですね。華やかなのですが、鮮やかな発色なので、今の私にはちょっとトゥーマッチ。どうやって使いこなそうかっていうのが課題だったのですが、今日、吉川さんから教わったように発色を抑え、透明感を出すようにしてみます。

このヘアーミストのフレグランスは最近のヒット。髪からいい匂いがするってすごくいいなって思うんですね。髪の香りってだいたいシャンプーですが、ヘアーフレグランスをつけて出かけると、自分を何か特別大切にしている感じがあって上がるんです。ふわっと香りを軽やかに纏って周りの空気をほんのりと香らせる感じ。女性に可愛がられるようにデザインされた容れ物もいいですよね。

ボディーにつけるアロマですが、さっきのヘアフレグナンスが女性的な気分だとしたら、こっちはキリッとしたい時に。これを作ったマミレヴィ先生がこれは緊張しているときに嗅ぐとおさまるという風にも言われていました。疲れているときは首のあたりにつけるとすっきりとした気分になれます。元気付けですね。

受けとめること

私は若い頃、自分に強いコンプレックスがあって、それを楽にしてくれたきっかけの一つには化粧が好きになったことがあると思います。

顔の傷が目立たなくなったとか、まつげが短いのを長くできたとか。

メイクの力ってすごいなって思うのですが、そういうことと関係なく褒めてくれた人がいたというのも大きかったかもしれません。自分一人だと、悩みって迷走しやすいから、時に人の言葉が助けになりますよね。

隠せるっていうのはホッとするけど、隠したくなるものなんて年々増えてきます。だからシミやシワ、最近気になりますが、出来るのが当たり前のものだとも思っているので、本当はそれを受け入れて、そんな自分を楽しめたらいいなあって。毛穴が目立つとかいうのも、人間なんだからあるのは当たり前で、それを拒絶するのは不思議な感じがしますよね。

お化粧ってシミがどうとか毛穴が、とかじゃなく、色をのせたりしてちょっとドキドキするようなことを楽しむ方に持っていきたいですよね。アクセサリー変えてちょっと気分が変わるみたいに軽い気持ちでいろんな口紅を楽しむとか。

そのためにスキンケアはもちろん頑張りますが、意識を変えるっていうのも必要だと思います。

誰かの美のルールを目指した頃

41歳になりました。今の方が昔より好きです。精神的にずっと楽になったから。若い頃は大変でした。コンプレックスの反動で、それこそおしゃれも防護服のような見た目にするんですよ。完璧な状態を目指して。“雑誌から出てきました”くらいを目指すことで安心するからメイクやオシャレが好きになったというところはあるのですが。よく考えると、モデルさん達ってスタイリストやヘアーメイクとカメラマンがついて一生懸命つくっているんですもんね。それを毎日毎朝、わたしひとりでやろうっていうのは無理な話なんですよね。

人の美しさに正解なんてないって思えるまで、ずっと必死で誰かが作ったこれが一番美しいっていう世の中にあるルールに向かっていました。あれから随分経ちますが、もし続けていたら、年々自信も失っていくだろうし大変なことになっていたと思います。

気づき〜色んな美しさがあるんだ!

家で植物を育てるのが好きなのですが、冬は春のような華やかさがないのでどうしようと思っていたら、花屋さんが「これから葉が散って、やっと枝だけの季節になって、その美しさが見れる季節になりますね。」って言ったんです。それが心に響いてしまって。冬の状態は汚いって思っていたので春夏秋冬の全てがそれぞれに美しいって気がつかなかったんですよ。

女性の肌も体型もトータルな見た目もそういう事だ!って思ったんです。それは今の自分が一番好きと思えることに繋がりました。

そして全ての花は私が好き嫌いに関係なく、それぞれの魅力と価値を全うしています。それを考えると、結局それまでは自分の持っているものをありがたく思ってなかったわけですよね。違う存在になろうとか羨んだりとか。

いろんな良さを探せる気持ちになったら、本当に生きるのも楽になりました。こんな感じで自分らしく年齢を重ねていきたいなあって…。

スクールで伝えたいこと

スクールでいろんな女性の話を聞いて思うのは、コンプレックスを抱えていて、なかなかメイクを楽しめないということ。

多くは、雑誌に載っている理想とされる顔と自分が違うっていうことなんですね。本当は人それぞれ持っている個性、違いこそが楽しめるポイントなんで、誰が作ったかもわからない“美”に振り回されずに自分の良さに気づいてもらいたいのです。でも良さってなかなか気づかない。だけど悪さはすぐに気づくんです。そこで、悪さって悪いのかな?って。悪くなくないですかね?そう考えてみてください。

例えば私はすごく色が白いのですが、日本人って色白好きだから、それだけでもてはやされてきたんです。でも白い人から見た時に、色が濃いのが悪いかっていうとそんなこと全然なくて“めちゃくちゃああなりたい!”って思うくらい客観的に綺麗さを感じるんですね。けど私は赤くなるだけでなれない。黒い人も白くなれないかもしれないけど。そんなことを羨ましあってるってなんだろう。それよりも、その悪いってされているところがいいところだ、って気づきましょ!ということなんです。

同じように一重、二重とか、鼻が高い、低いとか。

そんなことより自分の持っている良さってこれなんだよって鏡を見てお化粧して顔から気づいてもらえると嬉しいですよね。

せっかく生きているんだから自分を楽しんで人生を送ろうって思います。顔にも出ますし。暗い表情には負のサイクルが宿っちゃう。そうならないきっかけみたいなものにメイクを習いに行くってなり得るかなあって。化粧を習うって女性にとって身近なものだから。いつの間にか明るくなっちゃっていたり。だからこれを続けていきたいんですね。

Photos :  Yasuo Yoshikawa

インタビュー・文 : Yasuo Yoshikawa

取材を終えて

After the interview

福井さんの言葉から、コンプレックスを少しでも楽にするヒントが人生経験の中にたくさん詰まっているんだなあって感じました。こんなに等身大な経験に基づいた福井さんの学校っていいですね。僕の娘もこんなことを教えてくれる学校に行ってずいぶん変わったのとちょっと重なってしまいました。人は時々必要なんですよね、こういった誰かの言葉が。

吉川康雄