from Japan

心地いいと感じるものを信じて

▼Profile

湯田桂子 KEIKO YUDA
1989年慶應義塾大学文学部卒業後、集英社に入社。最初に配属されたMOREで美容担当に。その後、結婚出産を経てnon-noへ異動、2004年MAQUIA創刊メンバー。副編集長を務め、2008年non-no副編集長、編集長。2014年MAQUIA編集長、2019年6月よりBAILA編集長。

湯田桂子 対談 吉川康雄

私の編集長という仕事

吉川 美容誌マキアの編集長から6月末にバイラ編集長に就任されたんですね。おめでとうございます!

湯田 マキアは2014年から5年間、自分なりに出来ることを精一杯やってきて、大きく雑誌を伸ばすことができました。バイラはまた心機一転、そこに新たにタネをまいて何を咲かせられるのか、自分でも楽しみなんです。

 

吉川 今でも忘れないのは、昔湯田さんがマキアの編集長になった頃、仕事でご一緒した時に、マキア一冊分の大量の色校を抱えていた姿。一ページ一ページがメモだらけですごいこだわりを感じたんです。

湯田 あれは毎号ずっとやっていますよ。全部好きなページ、納得できるページだけで一冊を埋め尽くしたいっていう思いがあるので。

本に限らないことだと思うのですが、人って誰でも好きな人とだけ会いたいし、好きな空間にいて、そういう好きなものだけに囲まれている時が一番幸せですよね。

そんな状態を本の中で作りたいんです。

そのために、まずは作り手がいいと思うページにこだわるのは重要だと思うんです。だから私も新作発表会に行って勉強したり、興味深いお話なら自ら取材しにいったり、質の高い情報だけを集めて紹介したいっていうこだわりを持って、ずっと動いてきました。

 

吉川 実際にはどうやって雑誌を作っていくんですか?

湯田 その号の大きなタイトルは、会議やいろんな作業が始まる前に、頭の中で言葉遊びをしながら出てきた言葉で決めちゃうんですよ。今まであまり取り上げなかったプチプラと大人の読者を繋げるとどうなるかな?とか。で、興味が湧いたら “今回は『大人のプチプラ』で考えてください”ってチームに振っちゃう。

 

吉川 指揮者のような役ですね。

湯田 そこからみんなが盛り上がっていくうちに具体的に見えてきます。

吉川 自分が投げたボールが何になるかわからないなんて、楽しそうですね!

湯田 わかる場合もわからない時もありますが、結局思った通りになんて絶対ならないから、“ああ、こうなるんだあ”っていうのはよくありますね。

吉川 それって僕の化粧品作りとすごく似てる。

湯田 前は自分の思った通りにならないときに、そうじゃなくて、って思うこともあったんです。でもマキアチームは皆どんどん力がついて、自分が思っていたのとは違うけど、これもいいなって思わせられることも増えてきて。

“すべて自分で!”なんてとてもできない仕事量だし、皆の力がすべてです。

 

吉川 チームを引っ張るって大変な仕事だと思うんですが、プライベートとどうバランスとってるんですか?

湯田 一日中仕事の話をしているので、親しい人と自分の言葉で話して、ゆったりと時間を過ごすって私にとっては最高の贅沢です。

そういう時の場所は、自分の心を満たす心地よいところを選びます。

吉川 今日のこの場所も気持ちいい外国のホテルのカフェって感じで素敵です。

湯田 お堀の石垣の和の景色と、モダンな造りの調和が居心地よくて。

会社や駅も近くて便利なのに、ひっそりと離れた感じもあって。

吉川 自分の時間を心地よく過ごすことでまたいい仕事が出来るようになるっていうのもありますよね。

 

自分を肯定できること

湯田 最近、雑誌が主催するイベントなどで“私、美容が好きなんです”ってよく話しかけられるんです。そんなふうに美容が趣味になっている方って今すごく多いんじゃないかなって感じています。

ちょっと前までは皆“誰々になりたい!”っていう意識が強かったと思うんです。例えばエビちゃんだったり、安室さんだったり。だけど今は誰かにはなりたくなくて、「自分の綺麗を探す」という価値観に変わってきているのを感じます。

人が最大に満足感を得られる一番は、自分を肯定できることだと思うんですよね。今の自分を見て“あっ、ちょっといいじゃない”って思えるだけでもいい。

 

吉川 最近いろんな人から湯田さんが今おっしゃったみたいなことを聞くのですが、それがこれから美容が変わっていく方向なんだなって感じますね。

湯田 そうですね。主役は自分。

多くの女性が美容ファンになってきているのって、ちょっと綺麗になることで、それが自分に自信をくれるって気づき始めたからじゃないですか。

吉川 誰かに褒めてもらうのは嬉しいかもしれないけど、時々違和感もあるでしょう?“えっ、わたし自分を褒めたい場所って違うんだけど”って。だから自分が自分を褒めることって大切だと思います。

 

湯田 自分が自分をいいと思えていたら、気持ちにも余裕がでますしね。

私が長年長かった髪を切った時、実家のメンバーと会ったら“髪切ったの? いいのそれで?”っていう反応で、次に会っても短い私に全然慣れてくれない。“伸ばさないの?”って。

吉川 新しい湯田さんのイメージを受け入れないんですね。笑。

湯田 とはいえ、やっぱり自分で肯定してあげないと前には進めないから。

吉川 自分を大切に出来るのって自分だけですからね。

湯田 20代の頃、自分のよさをわかって大切に出来てたらよかったな、と思いますが、そうはできなかった。なぜあんなにも自己否定していたのか思い返すと、人と比較してたからなんですよ。もともと自信のない人は、人と比べることで、より自分の魅力に気づくのに時間がかかる。それでも、自分なりの綺麗さがいつの間にか身について、楽しめるようになるなら、それまでの試行錯誤も無駄じゃないなって思います。

 

吉川 僕がモデルさんと話して感じるのは、彼女らの仕事は自分の綺麗を見つめる仕事だし、若さも求められるから、早い時期の気づきってあると思うんですよ。ああいう人たちがこれから先、もっと自分の経験を語ってほしいなって思います。湯田さんの言うように、若い時こそ自己否定ってしがちだからコンプレックス解消のためにメイクに走る。そんな意識を少しずつ変えるメッセージがあればって思いますよね。

湯田 私は若い時、ファッション誌をやっていたのに何を着ていいか分からず、毎日悩んでいたんですね。背が低いから似合う服なんてないって思い込み、いろんな服を着ることが苦痛だった。ジーンズが流行っていた時も似合うジーンズがない、と焦って試着して。でもあるスタイリストさんに相談したら“無理に履かなくていいんじゃない”って言われて、“あっ、そっか”って。履かないって決めたらジーンズで悩むこともなくなって気も楽になって。それ以来ほぼパンツってものをはいたことがないですね。

 

吉川 僕は17の娘がいるんですね。すごく痩せていてスキニージーンズが男の子っぽく似合って大好きだったのが、思春期でカーヴィーな女性的体型になって、スキニージーンズが全然似合わなくなってしまって…。そんな自分が嫌いそうで痛々しかったんですよ。ある時、じゃあフレアージーンズを履いてみたらって。今までと全然違う女性っぽいジーンズの良さに本人もやっと気がついて…。

湯田 よかった!そういう時の他人からのアドバイスってとても大事ですよね。

私もそのスタイリストさんのアドバイスがなければ、「自分に似合う服を探す」っていうところには行けなかったと思います。

その頃に思ったのは、読者はモデルのように恵まれた体型じゃないし、私のような小さな人でもお洒落が楽しめるようなページを作りたいってことでした。それは今でも全く同じで、ただトレンドを紹介するだけじゃなく、自分に似合うメイク、自分のことを“いいじゃない”って思えるような気づきや、そこからもっと自分を好きになれるような提案をしたいと思っています。

吉川 自分を愛せる自分のスタイルですね。

湯田 正解はひとつじゃないし、その人が本当に好きな、似合うものを見つけてほしい。

 

自分がいいなって思えるものを大切に

湯田 私の好きなものは、自分が「心地いい」と感じるものです。50を過ぎて気分をちょっと変えたくて、髪を切り、そうしたらフェイスラインも出るので、ちょっと華やかに見せるものが欲しいと思って、初めてピアスも開けてみました。初ピアスはパールがいいなって思ったんですが、カジュアル過ぎず、特別感が出すぎないものを。

吉川 パールはちょっとフォーマル感がありますもんね。

湯田 軽い感じにしたかったので一粒だけピアスでって思ったんです。

これ、TASAKIのホーンというピアスで尖った角のモチーフなんです。

吉川 パールの洗練と尖ったちょっとパンク調なデザインが合わさってるんですね。

湯田 コンサバ感ととんがり感が私らしいかな(笑)と思って決めました。

髪を切ってから毎日お世話になっている美容ツールもあります。今さら説明の必要もない美顔器のリファと、人に勧められたゾーガンキンという高周波の美顔器なんですが、どちらも使いやすい。フェイスラインをシュッとシャープに保つことは、印象を決める上で大事なんだな、って気づいてからこれらを毎日使うようになりました。

スキンケアとのコンビネーションが日課になってます。

このアラヴィータのブースター美容液はネオファーマジャパンっていう、本社がアラブUAEにある製薬会社から出ている製品で、細胞を作るミトコンドリアを助ける5Alaっていうアミノ酸が入っているんですって。いわば肌のエネルギーを補ってくれる美容液で、一回で肌が元気になり、一回で透明感が出るのが実感できます。オイルと美容液が一緒になっている感触も、肌が乾かないからすごく好きなんです。

吉川 油膜が薄いから軽いんだけど感触がちゃんと残りますね。こういう質感って僕も好きです。

湯田 仕事柄、常にいろんな新しい化粧品を試していて、それはすごく贅沢なことなのですが、肌に負担になっているのを感じることもある。でも試さないわけにはいきませんから、肌に負担をかけずに守る、ということを意識しています。

そういう意味で、肌をやさしく守ってくれる油膜の感触は大好きなんです。

吉川 湯田さんのようにスキンケアをちゃんとやってる多くの女性って、肌表面が綺麗に見えるようにスムースにするので、皮膚が薄い状態なんですよ。だから膜を足すスキンケアは僕も大賛成ですね。

 

湯田 クレンジングも重要ですよね。肌につけるものって、どんなにいいものでも最後には落とすでしょう。そのときに落としきらないことも取りすぎちゃうことも肌トラブルの元凶になるのを感じていますから。

このMelissa beaute クレンジングミルクは長い間ずっと愛用して使っています。

クレンジングミルクって、肌には優しくてもうまく落ちないものってやっぱり多い。だけどこれはきちんと落ちるんですよ。長いこと通っているエステで発売している、何度もリピートしているミルクです。正直いろんなクレンジングを使ってみますが、これじゃないと途端に肌トラブルが出ちゃうことも。

吉川 落ちない洗顔でゴシゴシやると汚れと一緒に必要なものをとりかねませんからね。これ、肌滑りがすごくいいから物理的にも肌を傷めないですね。

湯田 この3つは私の肌を作るメイクのトリオ。

Chiccaファンデーションフラッシュブラッシュリッドフラッシュなんですが、必要なカバーをしつつ、生き生きと自然に見せてくれるのですごく気に入っています。自分の肌が好きになる。

吉川 ベースメイクは大人の女性にとって最も大切なメイクのプロセスですよね。

ポイントメイクでのお気に入りは?

湯田 目は久しぶりにリキッドを使ってます。このウズのアイライナー。カーキもブラウンも、色に透明感があってナチュラルなのに目ヂカラがでるんです。

吉川 筆もいいですね。

湯田 描きやすくて失敗なしです。目元にすっと馴染んで目が強くなりすぎず、薄付きですがしっかり締まるので、すっぴんのときでも使えます。

吉川 リキッドだから薄くても効くんですね。

まだまだいろんなお気に入りがありそうですね。

湯田 自分らしいもの、似合うもの、しっくりくるものに出会えるって本当に幸せ。だからかな、昔から一度いいなって思ったものは案外遠ざかりませんね。

色々なものに触れる機会があるからこそ、余計に本物だって感じます。

吉川 湯田さんの価値観がブレないからお気に入りが集まってくるんですね。

湯田 “好きなものに囲まれる”っていうとちょっと気持ち悪いんですけど(笑)、そういうものがパワーをくれ、毎日を心地よく彩ってくれます。

吉川 そのこだわりがライフスタイルなんですね。

湯田 最近「人は心地よいと感じたときに綺麗になれる」という言葉と出会い、心から共感しています。

何が好きかもわからず、迷って思い悩んだ20代の頃から考えたら、少しずつ前に進んでここに来ました。そう思うと歳を取るのは悪くない。自分の目でいいと思えるものを選択できるようになったことは、最大の進歩でありご褒美です。

Photo : Yasuo Yoshikawa

インタビュー・文 : Yasuo Yoshikawa

取材を終えて

After the interview

湯田さんと一年くらい前にあったときに、僕のやっていたブランドのことで色々アドバイスをもらったことがあるのですが、それはお客様の立場に立ったまっとうな意見だったんですね。それを聞いていて湯田さんっていつもそういう女性たち、お客様たちの気持ちを持っているんだなって感じたんです。そして今回話して自身の雑誌作りも読者目線で作っていることを感じました。
あの時におっしゃっていた“女性にとって化粧品は夢見るものではあるけど日用品でもあるからリーズナブルな意識は残して欲しい”というアドバイスはこれからも僕のベースになっていくと思います。
これからも自分を信じて突き進んでいる湯田さんワールドを楽しみにしてますね!

吉川康雄