from Japan

「これがいい!」にこだわりたい

梅田美佐子 『& ROSY』編集長

▼Profile

梅田美佐子 MISAKO UMEDA

大学時代から女性誌で編集アシスタントのアルバイトを経験。1997年に宝島社入社。『CUTiE』編集部を経て、『sweet』編集部の美容担当に。2015年同誌の副編集長を経て、2016年9月より『& ROSY』編集長に就任。ファッションと同じように美容を楽しむアラフォー世代に向けた、おしゃれ美容を提案している。毎号のクオリティの高い付録も常に話題の的。プライベートでは9歳と6歳の2児の母。

「何か違うんじゃない?」が私の原動力

吉川康雄 美容誌『& ROSY』の編集長になられてどれくらいですか?

梅田美佐子 今年で3年目です。

『& ROSY』がターゲットにしている40代って、自分に合うものや、何が本物なのかわかってくる年代。美容だけでなく、これまでに培ってきた経験とか、あらゆるものが美しさにつながると思うんです。じゃあ、それってどんな人だろう?と考えてたどり着いたのが“品格”という言葉で、“品格美容”をキーワードに誌面を作っています。

吉川 それはスタイルのことなんですか?

梅田 人によって違います。受け入れることが品格だと思う方もいるだろうし、本当に人それぞれですね。

美容で言ったら、シミやシワを消そうとムキになって美容医療に走ったり、化粧品を買い漁ったりすることではないと思っていて。シミもシワも年齢を重ねれば当然のことだから、まずは自分を認めて、受け入れることが大事なのでは。

吉川 そういうメッセージを発信し続けてきて、いかがですか?

梅田 ファンもついてきていますが、セミナーを開くと質問もたくさん出ますし、まだ悩んでいる人がいっぱいいるんだなと。これだけ情報化社会になっても、自分にとっての情報が何かというのは、皆さんずっと探し続けるんじゃないかな。どんどん違うステージに行くから、一生満足することはないんだろうと思います。

吉川 その意見には大賛成。生きていけばずっと変化し続けるわけで、その中でいつもポジティブでいれるっていうのは、ありえない。

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梅田 結局、私の背景にあるのは不満というか、それっておかしくない?という気持ちとか。そういうものがパワーになっていますね。

吉川 色んなことに疑問を持ったり、ネガティブに感じることって、本当は当たり前のことだと思うし、そんなに悪いことじゃないですよね。ぼくも不満からプロダクトを作ります。

梅田 ネガティブな部分がないとポジティブに変われないと思うので、ポジティブに対する執着心が私はすごいと思います。それは、自分の好きなところでもあり、嫌いなところですね。「もう、それでいいかも!」という人もいると思うんですけど、私は「これがいい!」でなければ嫌なんです。

吉川 そういう気持ちでつくるときっと人に伝わるでしょうね。執着心って、絶対何かを生み出しますから。

梅田 メイクアップアーティストのRUMIKOさんが、新製品の発表会で「これがいい!という製品が出来るまで、私はOKを出さないのよ」とお話しされたことがあって。思わずRUMIKOさんのところに行って「さっきのお話、ものすごく賛成です!」と伝たことがあります(笑)。

美容は“寄り”ではなく“引き”が大事

吉川 ずっと美容を担当されていたんですか?

梅田 入社して2年ほど『CUTiE(2015年休刊)』にいて、その後『sweet』を17年やって、『& ROSY』です。ずっとファッションもビューティも担当していたのですが、ビューティ誌を見たときに、面白いのにどうして顔しかないんだろう?と、違和感を感じていました。美容って、“寄り”だけじゃなくて“引き”の視点も持っていていいのになって。

だんだんビューティ誌をやりたい気持ちが強くなったんですけど、宝島社にはなかったから、どこかのビューティ誌に入ったほうがいいのかな?と悩んでいる話をしたら、「いや、うちの会社も出そうとしてるよ」と聞いて。「なんてラッキーなタイミング!」って思いましたね(笑)。

吉川 梅田さんの思いが、そういうことを引き起こしたのかもしれませんね。

アメリカの場合だと、ビューティ専門誌は『Allure』くらいしかなくて…。それ以外だとファッション誌の中で引きの写真から寄っていって美容を見せていくものが多いですね。最終的に洋服もメイクも両方で底上げしてトータルで見せてあげる感じ。 

梅田 まさにそれがやりたくて『& ROSY』を作ったんです。美容だけでなくファッションも絡めた提案をしているので、一緒にやりたいと声をかけてくれるジャーナリストさんや、スタイリストさんもいましたし、ビジュアル的には他誌と違うものができているなと思います。

吉川 確かにステキな人って、顔だけとは思わないですよね。全体がいいから「あの人いいよね」となる。これって当たり前の感覚だと思う。

梅田 例えば、ドメスティックのファッションブランドのPRの方たちって、美容業界の人ほど最先端ではないけれど、感度が高いからメイクも上手にトレンドを取り入れていますよね。そういう方々に誌面に出てもらったり。

吉川 『& ROSY』はビューティとファッションが繋がっているから好きです。見せ方も夢があったり、ちょっと思いがけないような美しさがあったり。そういうものって気分が上がりますよね。

梅田 そうですよね。読者のイマジネーションを心地よくくすぐるようなビジュアルの見せ方にこだわっています。 

吉川 美容って、人の心にとっても響くものなんだって思ってますが、『& ROSY』はそういう意味でも存在感がありそうですね。

梅田 インスタライブをすると、パーソナルな質問がすごく多いんです。要は、私たちが発信してきた美容の枠では解決できない人がいる。でもそういう人たちが相談できる相手って、なかなかいないんですよね。だからこそ美容部員さんが、一般の人にとってのヘアメイクさんみたいになるといいなと思うんですけど……。

吉川 ステキな美容部員さんが、「これを使っているけど実は他社のこれも使ってます」とか、もっと自由に表現していけるといいですよね。何でもかんでもそのブランドのものばっかり勧められるとやっぱりアドバイスっていう気持ちじゃ聞けなくなっちゃう。

梅田 109でカリスマショップスタッフが流行ったみたいに、あの人を真似してみたいとか、話してみたいなとか、アドバイスされたいという美容部員の方がたくさんいたら楽しいでしょうね。

ひとりひとりが違う存在だから

吉川 『& ROSY』のカバーモデルは井川 遥さんですが、ぼく、大ファンなんです。ステキですよね!

でも、どうして彼女だったんですか?

梅田 まず最初に、雑誌のターゲット層と年齢が合っていたっていうのがあります。言うまでもなく、品格も華もある方ですし。井川さんも『& ROSY』に対してこういうものを提案したいとか、スタッフの一員という言い方は失礼かもしれませんが、チームになって一緒に考えてくださるんです。なので、ずっと一緒にやらせていただいています。

吉川 井川さんは無理している感じがなくて、エイジングに抗っている感じもないですよね。ほどよく受け入れつつ、でもネガティブも心に秘めつつ、それを「まあ、しょうがない。でも、出来るだけキレイでいたいわ」みたいな。そういう自然体な部分を感じるから、素敵だなと思います。

梅田 すっごく頑張っているわけでもなくて、頑張っていないわけじゃないと思いますけど(笑)。

吉川 井川さんと一緒に働いて、ご自身も影響されることはありますか?

梅田 うーん……、私は編集の立場で入って、井川さんはモデルとして入って、スタッフと同じように意見もくださるので、一緒に雑誌を作る上での大切な人ではあるんですが、影響されて色々やろうとかいうのとはちょっと違うかもしれません。まるで違う個性だから井川さんに似合うものが自分に似合うとは限らないですしね。

梅田 井川さんに、「今回のメイクで読者に向けて言いたいことは?」と聞いても、「やっぱり骨格が違うから、人によって違うかもしれないし、そこに気づいてくれれば、それでいいのでは」って。これが流行っているから使いましょうみたいな感じでは発信していないですね。

吉川 井川さんを目指して!なんていう必要ないですしね。あくまでインスピレーションを思いっきりくすぐってもらいつつ、できるだけ自分のことを観察してもらう。自分らしくていい感じをね。

梅田 正解はないですからね。

吉川 みんな性格も違っていて、それが表情となり容姿になるわけで、その人の魅力を考えるなら、こうしたらこの人みたいにステキになれるなんていうのは、余計なお世話かもしれない。

梅田 それでも答えを求めている人たちも多いわけで、そこにはヒントを与えていかないとと思っています。

吉川 たとえばデパートの美容部員さんも教えるほどお客様が自分で考えなくなってしまうことってあると思うんです。「あなたはこうです」みたいなことではなく、自分のことを見て自分で考えられるコツみたいなものって大切なのかなって。

梅田 そう! だから『& ROSY』にも、How Toページが少ないんです。大人だったら、文字が少し書いてあれば想像できるじゃないですか。

吉川 大賛成! あと大人だったら、雑誌とかを見て研究すればいいと思う。

梅田 アイライン入れているんだとか。

吉川 入れていても、こんな感じなんだとかね。

梅田 肌トーンをブルベとイエベで分けるのも違うなって思うんです。もちろん、自分がどちらのタイプなのか知るのはいいけれど、そこで使うものまでカテゴライズされるのはどうなの?って。

吉川 ベースさえつかんでしまえば、色って反対色も使えるし、同系色も使える。その使い分けが効果を生み出しますよね。そうやっていろんな色の表情を楽しんでほしい!

梅田 自分のパーソナルカラーは何色とか、思い込みすぎじゃないかと。私は、洋服によって自分を変えてしまえばよいのだ!と思っています。

 

カラフルなメイクも臆せずチャレンジ

吉川 そんな梅田さんの愛用アイテムを教えていただけますか?

梅田 これは、2019年の12月に発売された『& ROSY』2月号の付録用にukaとコラボレーションした「品格ネイルカラー」です。大人の手肌をきれいに見せるベージュのネイルを作りたいと思って、渡邉季穂さんに監修していただきました。付録は海外で作ることが多いんですが国内生産にこだわって作りました。

梅田 これは「MARIHA」のピアスです。この淡水パールは耳もとで揺れるデザインが可愛らしくて思わず購入しました。身に着けるひとの気持ちにやさしく寄り添う効果もあるらしいんですよ。

梅田 アラフォーのアイメイクは、毎シーズントレンドを取り入れないとメイク迷子になるので、定番カラーだけでなく、いろいろな色にチャレンジしています。どのアイシャドウパレットも、見た目ほど奇抜にならないし、気分でトライしちゃおう!と思って、楽しんでいます。

Photos / Interview :  Yasuo Yoshikawa

Text : Tomomi Suzuki

取材を終えて

After the interview

梅田編集長とお話しさせてもらうのは今回がはじめて。

『& ROSY』は雑誌名が好きで時々見ていて、カバーガールも井川さんだし……。

どんな方が作っているのか気になっていたのですが。

よく女性のお話をしようとすると、男目線や女目線に区分けされがちで、女性自身も男性受けがいいか女性受けがいいかみたいなジャンル分けされちゃったりします。

お酒の宣伝に出ている井川さんは、男目線でも好きになってしまいそうな女性ですが、女性からも憧れられる存在だろうとずっと思ってきました。なぜなら男性にも女性にも媚びを感じない、それよりも、自分を見つめて大切にしているような大人の女性に見えるから。

大人の女性の人気のない国で、そのステキさは僕の中で希望でした。

梅田さんとお話していて、自分の感覚を信じて進もうとしている彼女にも同じものを感じてしまいました。

諦めない強さもあるけどもろさも当たり前のようにあって、それを無理に隠さない。

彼女たちのような“女ウケ、男ウケなんて意識しないステキ”を目指すいろんな大人の女性の魅力をこれからももっと見せてほしいなって思いました。

そうしたら年を取るのも悪くないかなって思えるようになれると思うし、美容のエイジングの考えももっと変化をポジティブに捉えられるようになれる日が来るかもしれませんよね。

 

吉川康雄