from Japan

あるがままを受け入れて、ラクに楽しく!

大草直子 スタイリスト・エディター

▼Profile

大草直子 NAOKO OKUSA

1972年、東京都生まれ。大学卒業後、婦人画報社(現ハースト婦人画報社)に入社。雑誌『ヴァンテーヌ』の編集に携わったのち独立し、スタイリストやファッション・ディレクターとして活躍。『大草直子のNEW BASIC STYLE』(三笠書房刊)『大草直子のSTYLING & IDEA 10年後も使える「おしゃれの結論」』(講談社刊)など、スタイリングに関する著書も多数。
現在は、スタイリストやWEBマガジン「mi-mollet」のコンセプトディレクターを務めるほか、2019年に立ち上げた個人メディア「AMARC(アマーク)」を主宰。女性たちがもっと「楽に楽しく生きる」ためのメッセージを発信している。

明快な語り口と飾らない人柄が人気で、ファッションにとどまらず、ライフスタイルにいたるまで、多くの女性たちの支持を集めている。自身のInstagram(@naokookusa)はフォロワー26万人を突破。

「私らしく」を大切に

吉川康雄 去年、個人メディア「AMARC(アマーク)」を立ち上げられて、いかがですか?

大草直子 楽しくやっています。大変は大変ですけど(笑)。

吉川 「AMARC」の「“自分らしくいること”をもっと楽に楽しく」というコンセプトに、僕とすごく近いものを感じて。きっと、大草さんと僕は、似たようなことを考えているのだろうなって。

大草 わかります! 「AMARC」では、他人と比較することを手放して、自分自身を認めてあげて、今もっているものに感謝する。そんな提案を通じて、楽に楽しく生きる方法をお伝えしています。吉川さんのサイトの「unmixLove」は「ピュアーで、まじりけのない自分に対する愛」という意味だとお聞きして、うちのコンセプトと似ていると思いました。

吉川 大草さんの、「自分に似合うものを着よう」という提案や、ファッションとビューティをつなごうとされているところにも近さを感じているんです。

大草 本当にそうですね。メイクやヘア、ファッションもですが、誰もができる女性であることの権利というか、“楽しむための権利”のようなことになるといいな、と思っています。

メイクも、今日私が吉川さんにメイクしていただいたように、メディアにいると最新の情報に触れてアップデートしていけますが、普通の40代の方たちは、なかなかそうもいかないと思うので……。

吉川 あと普通の方は、“抜く”ことができない。

大草 そうそう!

吉川 メイクって、それが一番大切だと思うんだけど。

大草 うちの有料会員限定になるのですが、メイクアップアーティストや、色々なジャンルのプロをお招きして、そういう具体的なことを学んでもらえるようなセミナーを開催しているんです。情報を一方的に伝えるだけではなく、学びの場を提供していきたいなと。そんなことを色々やっているので、相変わらずバタバタしています(笑)。

お守りのように身につけているアイテム

吉川 スタイリストでもある大草さんが愛用されている物に興味があります。特にその腕時計は今日のお洒落のコーディネートの中でも“抜け感”としてポイントになっていますよね。

大草 この時計は、私のメンターである祖父の形見です。1970年代のジャガー・ルクルトを、ベルトを付け替え、「今の服」に合わせています。ブランドの方に見て頂いたら、中のパーツまで真正、そして大量生産していないモデルらしく「売ってください」と言われました(笑)。

吉川 その時のトレンドや気分で新しいことを色々取り入れて楽しむお洒落と変わらないパーソナルなものを組み合わせることで自分らしさが出ていいですよね。

大草 ローズクオーツのリングは、少しずつ集めているマリー・エレーヌ・ドゥ・タイヤックのもの。キャンディのような大きな石は、石が素肌に直接触れるデザインなので、「石のパワー」である“癒し”や“女性らしさ”をダイレクトに感じられます。

吉川 石のパワーのことはあまりわからないんですが、このフェミニンで淡いクールピンクの透明感は、女性の気持ちがリフレッシュされそう。

色と透明感が与える印象。その計算された質の高い物作りを感じます。僕も化粧品にそういう“色の持つ表情”を込めて作っていたのでついそんなふうに見えちゃいます。

大草 このピンクにあえてクールなシルバーではなくゴールドと合わせていることで温かみや癒しを感じられますしね。

吉川 色の仕事をしていると、こんな風に当たり前に暖色、寒色、反対色、同系色を組み合わせて効果を作り出しているんですけど、美容ではブルベ、イエベみたいに、似合う色を肌の同系色って決めつけちゃっている人が多くって、残念なんですよ。

大草 それもやっぱりわからないからそういうルールに頼っちゃうわけで、例えば色でも自分で縛られずに楽しく選べるように学べるところが必要だと思うんです。

自分を活かすことが美しさにつながる

吉川 雑誌などで大草さんの写真を拝見すると、いつも動きのあるヘアスタイルをされているのが印象的で。

大草 実は今日は、何もしないままここに来て……。くせが強くて、このウエーブも地毛なんです。

吉川 それは自然のくせ?

大草 はい。若い頃はずっとストレートパーマをかけていたのですが、もう嫌になっちゃって(笑)。たぶん、自分がいちばん似合う髪質で生まれてきたはずだから、それを愛していこうと考え方を変えました。

吉川 生まれ持ったものの良さを探し続けているんですね。

大草 やっとです。もう10年ぐらいは何もやっていないかな。

吉川 自分に対する不満から始まって、ストラッグルしてどうにか合わせていくという経験は、誰にでもありますよね。最初からわかっている人なんていない。

大草 私くらいの年代になると髪質も変わるし、悩んでいる読者も多いですね。年齢を重ねて、髪型も今までと同じでいい、というものでもないと思うので。ある程度の年齢になったら、好きなヘアスタイルをするよりも、自分の髪質に合った髪型を選ぶ。そんなふうに意識を変えていくのも大切だと思います。

メイクは内面をあらわすもの

吉川 肌がとてもキレイですが、何を使っているんですか?

大草 洗顔後のブースター代わりに、シゲタの「プレシャスEXオイルセラム」を素肌につけています。その後の化粧水の浸透がよくなって、肌に自然なツヤが生まれます。中で浮いているのはゴールドで、ほかにもザクロやローズヒップ、ラズベリーなど、女性の味方のエッセンスがたくさん入っていて、もう何本目かわからないほどリピートしています。

吉川 見た目がめちゃくちゃ綺麗なプロダクトですね。ついつけたくなっちゃう(笑)。大草さんといえば、健康的な肌色もトレードマークですよね。

大草 日焼けがライフワークなので(笑)。レーザーでシミを取るのも考えたことがあるんですが、3カ月間日焼けができないと言われて、それならいいやって(笑)。

でも今日していただいたメイク、私はシミがあるから塗らないと不安になるんですが、まったく気にならない! ツヤも全然違いますね!

吉川 シミはあるけど肌表面がスムースでキレイだから、ファンデーションは少なめにしちゃいました。色ムラを消すために素肌っぽさを消してしまうほど厚くカバーすると、塗ってます感がどん!と出てしまう。大人の女性にとってはその方が悪……。だからツヤで生き生きとした肌に見せることを重視してカバーはその範囲内で。その色素がシミだろうがなんだろうが少し薄くなるだけでそばかすみたいにチャーミングに変身しちゃうでしょう?

大草 ツヤ、テカリ、敵!という感じがありますけれど……。

吉川 マットな肌にしようとしたら、ツヤは確かにテカリなんです。でも全部をツヤにすれば、きれいなツヤ肌になる。部分的に違うのがダメなので、均一な質感で仕上げていかないと。

大草 ツヤって大事なんですね。髪のツヤも大事ですよね。

吉川 あとはマスカラのツヤも。僕はそれにすごくこだわっていて、まつ毛も髪と一緒の毛だからツヤがとても大事。

大草 目に光が入ったようになるのかな? 星が入ったみたいな。

吉川 そうです。マスカラ液って、塗るときはツヤがあっても乾くと縮むので、その時にすりガラスのようになるんです。でも処方が難しいから、本当にツヤを感じるマスカラはまだどこにもないと思う。いつか作ってみたいなあ…。

今日の眉毛も、大草さんの眉に、ほんの少し深みの黒を足しただけです。

大草 アイシャドウも、そんなにたくさん塗っていないのに、目がとても印象的になるんですね。本当に不思議!

吉川 おしゃれとメイクのバランスって、僕は足して100〜120ぐらいになるのがベストだと思うんです。今日の大草さんの場合は、もう洋服で80ぐらいあるので、唇にポイントがある程度の、大草さんの影に隠れるようなメイクでいいかなと。

大草 吉川さんのメイクは、イキイキとしていてポジティブで、生き方に前向きな感じがするのがすごい! メイクは、その人の内面や女性像、どういうディレクションで生きたいかを示すものなんですね。流行のオンパレードにすればいい、ということでもないということが、今日よくわかりました。

吉川 お化粧ぽくなるのが、一番ダサいと思うんです。大草さんは眉毛もあるし、唇も赤いし、スタイリッシュだから、目元にピシッとした強さが入るだけで十分。

大草 メイクやスキンケア云々の前に、自分を認められない女性や、どうしても自分のことを好きになれない方も多いと思うんです。そんな方のために、今度吉川さんに“心に効く美容”の話をして頂きたいです。

吉川 いいですね! 次回は「AMARC」で、ぜひやりましょう。

Photos / Interview : Yasuo Yoshikawa

Text : Tomomi Suzuki

Hair : Katsutoshi Sakaguchi (Sui)

撮影協力:ヘアーサロンSUI表参道

取材を終えて

After the interview

大草さんのおはなしはいつもわかりやすいなあって思うのです。

人に伝わることばで話してくれるので。

 

一緒にいると、元気なオーラからエネルギーをもらってしまうから、

いつの間にか『出来てしまうかも』って思わせてくれる。

 

周りの人にとって嬉しい女性に違いありません。

 

そんなムードがあるから人が集まってくるでしょう。

 

“プロジェクト”というのはなかなか一人でできるものではないと痛感しているので、

大草さんの「AMARC」を見ていると作り手として感心してしまうのですが、

お話ししているとその“できる理由”を感じてしまうのです。

 

吉川康雄