from Japan

“違い”を当たり前にしていきたい

大野理恵 キャリアフライ(株) 代表取締役

▼Profile

大野理恵 RIE OHNO

人材派遣業界で経験を積み、2015年に「キャリアフライ(株)」を創業。「違いを、当たり前にする。」をミッションに、理工系海外女子の人材紹介サービスを提供。多様な人材を必要とする日本企業と、専門性の高い海外女子のマッチングをすることで、日本企業におけるダイバーシティ文化醸成の一助となることを目指している。

メイクは引き算が大事!

吉川康雄 今日は僕がメイクをさせて頂きましたが、どうでしたか? 普段と違っていましたか?

大野理恵 基本は同じだけれど、やはりプロの手にかかると違いますね。素材を生かそうとしてくださるところに大変共感しました。

吉川 大野さんは美人だけれど、目鼻立ちがはっきりしているから、やりすぎるとコテコテになってしまいそう。さじ加減が大変なのでは?

大野 メイクをやっていて上手に引き算することの大切さって感じます。今日はそのやり方で、自分の気付けなかったところも教えて頂けたので嬉しかったですね。

吉川 パーティの時とかはどうしていますか?

大野 いつもいろいろ考えるのですが、意外と普通なんです。結局は、“自分の素材を活かしつつ、そのときのドレスコードに合わせてちょっとだけ華やかに”みたいな感じに落ちつくのかな。

吉川 “自分の素材を活かす”というのは大賛成です。 結婚式や華やかな場で失敗するのは、普段よりもずっと派手な服を着ているのに、メイクもヘアも盛りすぎるから。見たこともないような自分になっちゃったり……。服が派手なときほど、素肌感を大切にしてメイクもやりすぎないことが大切かもしれません。

大野 すぐに派手になっちゃうんですよ。なのでいき過ぎないことって、私の中で一番気にしていることかもしれないです。

でもそのためにはやっぱり肌状態って大切だなって痛感したことがあって……。

ちょっと前、肌荒れがひどくて悩んでいた時期があって、さまざまなスキンケアを試しまくったことがあるんです。あまり効果がなくって困り切っていたとき、馴染みのサロンオーナーがこのレンゲ化粧水を紹介してくれて。そうしたら冗談抜きに効果てきめんで、お肌も回復。

大野 安価なこともあって、今となっては毎回大人買いして毎日塗りたくっています。レモンエキスが多分に配合されており、肌の抗酸化防止や潤いアップに効果があるのだと思います。

こんな感じで肌状態が整ってくれているからこそ、この愛用のファンデをささっとと塗るだけでちょうどよくさりげない私好みの感じになるんだなって改めて感じて。このshu uemuraのパウダーファンデは、色が私のちょっと濃い肌色にピッタリと合うから。そうするととっても自然に仕上がるんです。

吉川 肌がきれいに仕上がると、ポイントメイクを引き算しても、そこに綺麗さを見つけ出しやすいですよね。

大野 若い時は足し算ばっかりで、それも楽しんでたんですけど……。

吉川 いつ頃から変わりました?

大野 キャリアフライを起業した頃からでしょうか。小さなスタートアップ企業なので、私の雰囲気で何かプラスに転じるなら、これも使うに越したことはないですし、ある意味悪い方向に行く場合もあるので、ただ足し算を楽しんでいる場合じゃないぞっていう感じで。

例えば、過度な香水は控えて心地よい香りの演出をするとか。

このマリエオーガニクスパフュームオイルは、さりげないフレグランス効果のあるオイルなのですが、毎朝手首と首元につけています。何より香りが良くって! 個人的にはプルメリアココナッツバニラの香りが好きですね。

吉川 今日お会いする前に、大野さんの会社のWEBサイトで写真を拝見した時は、明るい笑顔の写真なんですが、そこにエネルギーが満ちていて……。

「ものすごくできる女性の社長さん」っていう感じで圧倒されるような人だったらどうしようと内心思っていましたが、そんなことは全然なくて……。

この香りのせいかな?(笑)

大野 もともとは兄二人の3人兄弟の末っ子で育ったので、甘やかされて育って……(笑)。 何かあっても逃げる、途中で投げ出す、コミュニケーションも下手でしたし。そういうのが社会人になっても出ていたのですが、ありがたいことに、それに気づかせてくれる人が周囲にいて、できることはきちんとしなくてはいけないと、意識的に変えました。それでも今でもコミニケーションは難しいなあって思いますけどね。

吉川 お話は、すごく上手だと思うんですけど……。

人とコミュニケーションする時って、何に注意するようになったのですか?

大野 喋らないことです。相手のことを知らないと、向こうも心を開いてくれないので。まずはできるだけ相手に喋ってもらって聞くことに専念します。相手が質問してくる場合もありますけど、あなたはどう思っているの?と、すぐ切り替えしたりして。

吉川 僕も昔から人の話を聞くのが難しいなあって思っていて、unmixloveの取材でもそうですが、途中で相手の話を止めてつい僕が喋ってしまう。後でテープ起こししていても「もっと話を聞きたいのに〜!」って自分のことを怒るんです。

大野さんと話していて思うのは、人の話を途中でカットしないですよね。

大野 トレーニングで培うしかないですよね。

私もお喋り好きではないし、人前で話をするのも苦手でしたが、今は緊張しないし、使い分けができるようになりました。

“同じ”が当たり前の日本企業に風穴を開けたい

吉川 どのような会社を経営されているのですか?

大野 我々は“海外女子”と呼んでいるのですが、外国籍の理工系女性を日本企業にご紹介する人材紹介のエージェントをしています。

このサービスは、あくまで方法の一つととらえ取り組んでいます。私たちが目指しているビジョンである「違いを当たり前に!」を実現するためです。もう少しわかりやすく表現すると、企業内に多様性をつくりだすということです。

吉川 いま色々なところで聞かれているダイバーシティですね。

大野 はい。社員の8〜9割を日本人が占めていて、均一、単一な文化が当たり前の日本企業に、まったくバックグラウンドの異なる海外女子が入れば、間違いなく化学反応しか起きないと思っています。

多様性を生むための第一歩は、まず違いを受け止めるところから始まると思います。受け止めたのをいったん理解してみる。理解して、これいいねとなる。いくつかのステップを踏んで、違いを当たり前にしていけたらいいなと。

吉川 大企業は男性社会でもありますから、そこに女性、しかも外国籍の方という真逆の混じりにくい存在が入るのは、相当インパクトがありますよね。

大野 STEAMという、「サイエンス」「テクノロジー」「エンジニアリング」「数学」の頭文字をとった単語がありますが、この4つのSTEAM分野の技術や知識を持つ人材が、既存の企業のビジネスと掛け合わさることで、新たなサービスや事業が必ず生まれると確信しています。

吉川 理工系というジャンルは言葉も性別も超えますよね。日本人の理工系女性は紹介していないのですか?

大野 これはビジネス的な話になりますが、なにしろ人材がいないんです……。東京工業大学でも女性は1割程度しかいなかったり。この背景にあるのは、日本の教育が問題だと思います。

吉川 女性なんだから文系に、ということですかね、日本は。

大野 高校の文理選択のタイミングで、「理工系に行くと就職できないから、文系に行きなさい」と助言する親御さんが多いのも理由のひとつだと思います。

吉川 理系に向いている女性って、日本でもいっぱいいると思うんですけどね。本人が何のちゅうちょなく理系を選べる環境に、もっとなっていくといいですよね。

違いを受け止めることが多様性への第一歩

吉川 理系の海外女子の就職支援と、優秀な人材を採りたい企業をマッチングさせる、このビジネスのアイデアはどこから出てきたのですか?

大野 いちばん影響しているのはシドニーに住んでいたことなんですかね。3年ほどいましたが、オーストラリアは多様性のある文化で、私も過ごしやすかったくらいに、異なる人種やバックグラウンドを持つ人とどう接するかに慣れているので、そこでいろんな人がいるんだなあって人への興味をもたせてもらいました。その経験が他の人材紹介会社との違いになっていると思います。

吉川 僕が住んでいるアメリカも“人種のるつぼ”と言われていますが、見ていて思うのは、プライベートではなかなか人種は混ざらないということ。だいたいは人種ごとに固まっているんですね。でもそれ以外だったら隣同士にいることはできるんですよ。

違うものに対する警戒心や拒否したい気持ちって、日本だけのことじゃなく、人が本能として持っていることかなって思うんですけど、違う人種、違う文化、違う育ちがあることを見て感じて理解しているかどうかの差は大きいと思うんです。日本ではなかなかそういう経験ができるところがないですよね。

大野 私たちがあえて外国籍と呼ぶのは、未だに外国籍の人々のことを“外人”と言う日本人の感覚を変えたいと思っているからです。もっとこうしたほうが外国籍の人もたくさん来てくれるんだよとか、小さいところからの発信ですが、気づいてくださる日本の方が増えてくれたらいいなと。

吉川 そういう方々のコミュニケーションは日本語ですか?

大野 大部分の日本企業は日本語ですが、スタートアップやベンチャーのIT企業は技術力があれば英語だけでOKだったり、きれいに二分されています。

吉川 オリンピックみたいな世界的な催しがあることは、日本人にとって大きなインパクトだし変わるきっかけになりますよね。

大野 はい。島国でいながらも英語が喋れなくてはいけないとか、そういう必要性を感じられる瞬間があると思います。

吉川 いまのグローバルなテクノロジーの中では絶対に必要ですよね。島国で育った日本人は横並び意識や同質性が強くて、言葉にしなくてもわかってくれるだろうと考えがち。それを違う人たちにも当てはめるから、日本の人たちは会話が下手なのかなって感じます。

大野 年齢を重ねた人は、日本の若者と話すだけでもいい練習になると思います。カルチャーも扱う言葉も違うから、ここの間で会話が通じれば外国籍の人ともイケるはず(笑)。

吉川 考えたこともなかったけれど、その通りかも! 大人や偉い人たちは、話が通じないと自分と違うものを受け入れずに「君たちは間違っている」と押しつけがちですよね。

大野 それが一番ラクだから、たぶん逃げているんでしょうね。

年齢を重ねるにつれて立場が変わると、フィードバックがもらいにくくなるので、それを自分で取りに行く環境や仕組みを作ったり、そういう雰囲気を醸し出しておくのも大事だなと年々思うようになりました。

 

女性が自立するために必要なこと

吉川 女性ということにも、こだわっていますか?

大野 男女平等と言っている割には、女性の自立が数として増えていないことに違和感があります。私は女性の自立は経済でしか測れないと思っていて、いかに“自分一人で稼げるか”という選択肢を世の中に増やすことが重要ではないかと。

吉川 離婚したくても、自分では稼げないからやめておこうとか。

大野 我慢するという選択肢しかないのは苦しい。多くの女性が経済的な自立をしてほしいという思いはあります。

吉川 アメリカは進んでいるといっても、ひと昔前、1950年代頃までは保守的で男尊女卑で、日本と一緒でしたよね。まだ現代でも差別は残っていると思うけれど、新しい世代になることがきっかけで変わっていくというのは重要だと思います。

大野 でも、意外と進んでいるかというと、まだまだですよね。ヒラリー・クリントンが大統領になれないのも、そういうことだと思うんです。

吉川 いろんな意味で対極の方がなっていますもんね。

大野 そういう中で、私たちの事業活動によって、女性の意識を変えられるかもしれない。インターナショナルな女性が企業で頑張っていることが、日本人の女性に対しても刺激になると思います。

金額の問題ではなく、まずは女性が自分でお金を稼ぐこと。専業主婦の方でも自分のお小遣いをパートで稼いだり。家事や子供のケアの責任もありますが、共働きも増えている中で、そういうことを共有しあうという風潮ももっと一般的になって欲しいですよね。

そういうことも含めて、一人でも多くの女性が働けること、自分で現金を稼げることができるようになることが、変わっていくきっかけになると思います。私たちが違いを入れること、そこから刺激をもらってくださいというのが、おそらく日本人の女性に対してやれることだと思っています。

 

Photos / Interview : Yasuo Yoshikawa

Text : Tomomi Suzuki

取材を終えて

After the interview

大野さんのお話はグローバルでちょっとびっくりしました。

こういう感覚が、とても必要とされているのを海外と日本、両方から見ているとすごく感じるのですが、日本の中にいるとなかなか感じられないものなんだと思います。

だから日本で多くの人と出会っても、大野さんのような方はなかなかいらっしゃらない。

海外が長いのかなあって思ったらたった3年。そういう長さには関係ないのかもしれませんね。

僕も海外目線と日本人目線、二つを持ってしまって、伝えたいことがたくさんあるのですが、何かそういう共通なものを感じてしまいました。

応援しています。

 

吉川康雄