今回は読売ウェブサイト『大手小町』の協賛で、松屋銀座にてイベント形式で行われたunmixloveの取材です。
コンプレックスを抱えて
吉川康雄 今日は僕が寺本さんのメイクのデモンストレーションをしながらお話していきたいのですが……。普段、メイクの悩みってあります?
寺本知香 悩みだらけなんですけど(笑)。
肌でいえば、気になっているのは毛穴とシミ。顔のコンプレックスでいうと、鼻が低いことや、唇の形も好きじゃなくて……。コンプレックスだらけなんです。あと、左右対称ではないことも気になっています。
吉川 たくさん出てきちゃいましたね(笑)。
寺本 でも“コンプレックスは抱えたままでもいいや”とも思っていて……。内に悩みを抱えていたり、悲しみがある女性は、個性的だったり女性としても色っぽかったりすると思うので、抱えながら、素直にまっすぐ生きたいなと。
吉川 そういう考えも、そんな寺本さんも素敵だなって思います。でも、抱えていくばかりだと、いつか抱えきれなくなるから、どこかで整理してみるっていうのもいいですよね。たとえばエイジングの悩みは見つけたら最後、次から次へと押し寄せてくるわけだし。それでも、自分のことを好きになれるようにしたほうがいいんじゃないかなって僕は思います。
寺本 自分を好きになることが解決なんですか?
吉川 受け入れること、かな。
たとえば世の中的には、二重まぶたがいちばんで、奥二重、一重はその次みたいな感じでしょう。これが事実だったら仕方がないけれど、僕は事実ではないと思うから、そういう誰が決めたかわからない概念に自分をはめてしまったら、自分自身の魅力が見えなくなっちゃうと思う。
寺本 “世論が決めた美の基準”みたいなものにはまっているのは、私もだけど、みんな持っているでしょうね。そこかしこで刷り込まれるから。
吉川 左右対象な人なんていないのに、それにこだわるのもそうですよね。気になると、メイクの目的がそこになってしまうでしょ?
そうなると、自分の子供とか親しい友達みたいに愛があるほど左右対称のやり方を教えたりして……。で、左右対象病がうつっちゃう。
寺本 他人のそういうところも見ちゃうかも……。
吉川 でもメイクで左右対象にするときれいになるなんて僕は思わないし、そこに表情が合わさると余計左右なんて対象じゃなくなるし。
いっそ左右なんて絶対一緒にならないんだから、そういう自分をきれいにしてあげることを考えたら、よりその人らしい綺麗さが出て僕はいいと思うんですよね。
寺本 なるほど。左右対称の呪縛から卒業したほうがいいんですね。
吉川 年を重ねることも同じで、時間と共に少しずつ変化していく自分に逆らって若さを目指してメイクをしたら、今の自分を隠すためのお化粧がどんどん厚くなっちゃうし、それといっしょに気持ちも苦しくなりますよね。
寺本 コンプレックスっていったら、生まれ持ったものにしか思わなかったし、エイジングのことってまた別のジャンルでアンチエイジング美容のことかと思っていたけど、同じコンプレックスなんですね。
吉川 朝起きて、鏡で今日の自分を観察すると、生まれ持った個性は日々変化しているわけで、そこには“今の自分”がいますよね。
5年経つと誰でも違いに気づくけど、正確には昨日とも違うわけだから、なんの疑問なく昨日までと同じメイクをするんじゃなくて、今日の自分をきれいにしてあげる気持ちが大切かなって。
自分の魅力を最大限出すには、自分をよく見てあげて、どんどん認めてあげることじゃないかな。それを活かして最高の状態にできたら、変化していく自分の中に美しさを感じられるかもしれないでしょう。楽しくなれるよね。
自分の苦手をうまく使おう!
吉川 こうやってメイクを落としたときに現れる、ほんのり色素を感じるまぶた。年を重ねて色素が濃くなる人っていますよね。それをみんなすごくネガティブに思っていませんか?
寺本 本当に顔はもう、アートでいいと思っているんで、コンシーラーで思いっきり消してからメイクします。
吉川 そうじゃなくって、それって、すごくキレイだなって思うんですよ。沈み色って、色気なんじゃないのかなって。
例えば唇なら、沈んだ唇の色に、ほんのちょっと赤を加えるだけでボルドーに変わるんです。
寺本 リップには使わないけど、ボルドーや赤は大好きです。クリスチャン・ルブタンのセクシーな赤は大ファンなので、こんなヒールにサインまでいただいたくらいなんですよ。豪華で綺麗な色ですよね。
吉川 でもボルドーや深い赤って、みんなが嫌う大人のくすみ色で出来ているんですよ。
寺本 だから大人っぽい印象なんですね! じゃあこのくすみはおしゃれに出来ちゃうってことですか?
吉川 みんなはコンシーラーで消してから色をのせるけど、コンシーラーの顔料とお化粧が合わさると、厚化粧にしか見えないんですよ。それよりもちょっと透ける色を直接くすんだ肌に乗せると、くすみが透けておしゃれで色っぽい仕上がりになりますよ。
寺本さんもまぶたに天然のボルドー色があるので、それを生かしてボルドーゴールドのアイシャドウを乗せようかな。
寺本 私は一重で、目の形も右と左でちょっとだけ違うけど大丈夫ですか?
吉川 あんまり気にする必要はなくって、見たときの感じで、片方だけ一重の中に入って色が隠れるなと思ったら少し色を広く足して見えるようにしてあげる。一重はまぶたに立体感がなく平らなので、色が見えるようになると不自然さも出やすい。だからきれいにぼかす必要があります。こうゆう柔らかいブラシを使うと簡単にきれいなグラデーションを作れます。目の際のしっかり締めたいところはこうゆう細くて硬めのブラシを使うんです。それぞれ目的に合ったブラシを使い分けていくとアイメイクは簡単なんですよ。
次は唇ですね。
寺本 私、小さい頃に他の人と唇の形が違うって気付いてからずっと唇の形が嫌いだったので、なるべく自分の顔から唇の存在を消したくて、ベージュのリップしか塗ったことがないんです。
今使っているのもこのルブタンのこのベージュのグロスです。
吉川 わっ、すごくきれい! でもすごくかたくななんですね……。
せっかくの機会なんで、今日は唇の形を強調しないやり方で赤いリップをつけてみませんか?
寺本 赤リップって、いままで何度も流行ったじゃないですか。家では一人で試したりするんですが、絶対似合わないから、外で付けたことは一度もないです。
仕上がりがいやだったら嫌いって言ってもいいですか?
吉川 もちろんです。このサンローランは、シアーなんだけど、水が入っているのでつけると艶が消えてステイン風に染まった感じになるんです。だから素の唇みたいな感じなのに、血色を感じる。これでうまく唇の形を整えることができるんです。
上下の唇に少しだけ色をのせたらこの柔らかいアイシャドーブラシで唇全体に色を広げて馴染ませていきます。輪郭は線を出さずにぼかしながら形を作っていくと自然に綺麗な唇の形で色が染まった感じになります。どうですか?
寺本 あ、見慣れないです。でも、自然に馴染んで、思ったよりも赤くないですね! それより血色が良くなった感じ。
吉川 そしたらこの上から艶をつけましょう。
寺本 私、このディオールのマキシマイザーの艶感とミントの感触が好きでいつも使っています。
吉川 こんな血色色のリップに艶がついたら赤ちゃんの唇みたいになっちゃいましたね。
寺本 あー、すごい。いいですね。ありがとうございます!
メイクだけで頑張らない
寺本 普段使わない色ばかりなのに違和感がないですね。塗っているのはわかるのに。
吉川 うまく透けさせているからナチュラルに仕上がるんです。
寺本 わたしにもいろんな色が似合うんですね。でも、シェーディングはしないんですか?
吉川 ツヤ肌に仕上げれば、光を反射する部分がハイライトになって、当たっていないところが影になる。自然と凹凸ができるから、シェーディングは必要ないです。影をメイクで描くと、自分の骨格からどんどん離れて不自然になったり、横から見ると影がお化粧として見えちゃう。
寺本 確かに、自分が鏡で見る正面しか知らないから、他の人から見たときにどう見えるか、わかっていないかも。
吉川 周りの人からは、自分の横顔はもちろん、上からとか自分の知らない顔を見られていると思ったほうがいいんじゃないかな。だから三面鏡を使っていろんな角度で顔をチェックするんです。
それと、寺本さんの場合は、その髪型もシェーディングの一環ですよね。 綺麗なヘアカットだから自分の顔にいい影を作っています。
寺本 美容師さんと相談しながらやってます。ヘアーはこだわりが強いので。
吉川 寺本さんがいいなと思うのは、自分に似合うものを知っているんですよね。この髪型も、顔の周りの髪が作る影がちょうどよく寺本さんの顔を綺麗に見せている。
寺本 ありがとうございます。
吉川 せっかく自分の髪で綺麗な陰影を作っているのだから、メイクで不必要にペイントはしないほうが素敵です。
特に大人はメイクに頼るだけじゃなく、色々な技で透明感を目指して欲しい。作り込むのは厚ぼったく見えるから、引き算が大切なんですよね。
寺本 今日は今までやってきたメイクと全然違っていてびっくりしました。でも、ありのままの自分を、ということに時間をかけて教えていただいたので、なるほどなって……。少し考え方が変わっていきそうな自分を感じます。
撮影 / イベント協賛:松屋銀座
イベント協賛:大手小町
Photos / Interview : Yasuo Yoshikawa
Text : Tomomi Suzuki