from Japan

大人が大人を楽しむ

天野佳代子 美的GRAND編集長

▼Profile

天野佳代子(KAYOKO AMANO)   美的グラン編集長

1957年 東京都生まれ

20代で美容ライターとして活動をスタートし、小説の執筆や音楽業界での執筆を経て2001年、美容専門誌『美的』創刊とともにエディトリアルディレクターに就任。懇切丁寧でわかりやすく、かつ美しく大胆な誌面作りをモットーとし、ヒット企画を次々と手がける。

2018年9月、大人の女性を対象とした美容専門誌『美的GRAND』を創刊し、編集長に就任。

2019年9月には著書『何歳からでも美肌になれる!』(小学館)も発売され、活動の幅を広げている。

思いをピュアーに伝えるのが楽しくって!

天野佳代子 この仕事をやっていると日々いろんなことがあるから、眠れなかったり、休めなかったりするときもありますが、それでもこんなに楽しい仕事はないなって思います。

吉川康雄 “この仕事”というのは美容のことですよね?

天野 美容を含めた、何かを作るというクリエーティブなことです。

何よりページを作ることがものすごく楽しいから。

私がたまたま“美容好き”っていうことがページ作りに活かされている感じですね。

吉川 じゃあ、どっちかっていうと作ることなのかな?

天野 作るの大好きです! それをやらせていただいている私も吉川さんも幸せだと思うんですよね。

吉川 しかも多くの女性が天野さんの発信することを待っているじゃないですか。

天野 そんな読者の受け止める気持ちは間違いなく活力になってますし、そこに向かう私の思いが“読者と自分のコミニケーション”のようになっているのを感じます。

吉川 いくら一生懸命でも片方だけが追っかけている感じだと成り立たないですもんね。

お互いが楽しんでいるから結果、僕たちはこうしてやっていられるんですかね。

天野 私自身が楽しんでなければ伝わらないって思いますよね。

吉川 僕も同感です。

天野 その楽しみをもっと広げて、初の美容本を出してみたんです。

今、この年齢になってこそわかる美容の考え、今までの美容人生で得たよいと思えることをまとめました。

最近自分を見ていて、ふと亡くなった母に似てきたなあって思うことがあるんです。そう思うと、母は年齢を重ねていく姿をずっと娘の私に見せてきてくれたわけで、母の老い方をなぞっていくと、自分がこれから先、女性として、どう美容と一緒に生きていけばいいのかが見えたような気もします。

加齢や老いがすごく近くに感じるようになってきたというか。

吉川 そんな天野さんだからこその“何歳からでも美肌になれる!”っていうタイトルなんですね。今日もツヤツヤだし。

天野 そのためのスキンケアっていうのはとっても大切で、私なりのこだわりはたくさんあるんですよ。でも、それは私の本を読んでいただくことにして…(笑)。

肌を活き活きとした“美肌”に見せるっていうベースメイクのこだわりも私の中ではとっても大切なことなんです。

例えばこの下地として使っているコスメデコルテ エッセンス グロウ プライマーは、肌ツヤをとっても自然な感じで作り出してくれるので、ハリのある肌っていう感じになるんです。

これを全体につけた後に部分的にこのKohGenDo マイファンスィー メイクアップ カラーベース パールホワイトをつけて、くすみを払います。

そして最近のお気に入りのファンデーションはこれ、ディオール ディオールスキンフォーエバー フルイド マットです。やっぱりどんなにスキンケアで手入れの行き届いた肌になっても誰でも補正したいところがあると思うんです。だからファンデーションにはちゃんとしたカバー力を求めちゃいますよね。必要な時は頼もしくなるし、調子いいときならどこまでも薄くつけて自然に美しく見せられますから。そしてこれで活き活きとした肌感にはなったら、足りない顔色を補うように、このNARS リキッドブラッシュをほんのりと薄くつけていきます。

このファンデとブラッシュは肌作りの大切なデュオなんです。

吉川 見えないワザがいっぱい入っているんですね。

天野さんとは今までたくさん仕事をしてきましたが、現場でもそれ以外でも言葉がいつも心からまっすぐ出ていて、目がキラキラして…。人を引っ張っていく偉い立場の大人のはずなのに、ピュアーさ、僕が“自分がいつまでも子供だなあ”って思う同じものを天野さんにも勝手に感じているんですよ。

だから“奇跡の62歳”なんて言われる肌のきれいさでも、

美容オタクの大人女性が頑張った結果みたいには見えなくて。

その肌の活き活き感とキラキラした子供みたいな目やパーソナリティがマッチしてるからすごく自然なんですね。

天野 ありがとうございます。でも、私は単に子供なだけなんです。

吉川 素敵です。

人と出会うことでアップデートされる

天野 でも仕事ではいろんなことをはっきり言うので、それを“怖い”って思う人もいるかもしれないけど…。

吉川 僕たちの仕事っていろんな人と出会うので、伝えるためには時には必要なことだなって思いますけどね。

天野 今回吉川さんの媒体に登場させていただいたように、雑誌編集長っていう立場から離れてこういう新しい活動をすると、今まで会わなかったような人たちとの出会いも多くなりますね。

普段の雑誌作りでは、メッセージを作りあげていくのにしっかりとまとまった編集チームが協力しあっていくのですが、個人の活動だと、いつものチームはいないので、想定外のことも起こったりするし。でも、この吉川さんのウェブを見る人も美的グランの読者もかなり共通していることを考えると、そこは責任持って広く頑張らなきゃっていう気持ちになりますよね。

吉川 美的グランの雑誌作りの様子をもっと聞きたいんですけど。

天野 美的は創刊から携わって美的グランまで考えると、ずいぶん長くやってますが、この長い年月の間にたくさんの若い人たちが入ってきました。

その人たちに教示していくのは大きな仕事でもあります。最初はライターさんに対して“エイジングを理解できるかな”って思ったりもしたんですが、それぞれの世代でそれぞれのエイジングを感じているわけで、年を重ねることに対する思いは普遍的に女性はもっているんだなあって感じます。

たとえば自分の考えや知識は、若い時の情報から始まって経験を積んで広がっていったところがあるじゃないですか。でも、若い人たちの感性って、新しい時代の中で新しい感覚の中で得た情報だと思うんです。それって自分には得られないことなので、彼女たちに教示しながら、結局多くのことを学んでいるように思います。

できるだけそのまま受け入れてみて、その結果、取り入れるものもあればそうじゃないものもありますけど、そうやって自分自身が少しずつアップデートしているのは間違いないですね。

若い人と働くっていうのは自分がその人たちに伝えられることと、教えてもらえること。世代がつながっていくっていうことなんですよね。

雑誌作りはチームワークで成り立つ規模の仕事なので、私自身の思いにこだわりすぎたり経験に頼るだけではなく、チーム全体が持ちつ持たれつで成長していくっていうのが、いい結果につながるって今は思いますね。

伝えたい美容のメッセージ 

吉川 具体的に美的グランの読者にはどんなメッセージを送っているのですか?

天野 大人が大人を楽しもうということを送りたいです。

例えばテレビや映画を見ていて、ヨーロッパやアメリカのものだと、普通に年を重ねた味のある女優さんが出て大人の女性を演じるから、リアリティーを感じるんですね。その中で魅力を見つけだせると“歳を重ねても素敵でいられる”っていう意識を自然に持てるようになれるんですよ。

でも、日本のドラマだと、こんなに若いおばあちゃんはいないなって思っちゃうくらい女優さんたちは若くてきれいだと思うんですね。ほとんど現実的じゃないくらいに。社会が求めているのか、女優さんたちが頑張っているのか、わからないんですけど。

吉川 ぼくはそうやって発信される女性像は“若いことがよし!”っていうふうに感じちゃうから、大変だなって思います。 

大人の女性が大人っぽく素敵になろうとするならわかるんですけどね。美容でもオシャレでも若い女性を目指したら、せっかくの大人っぽさが勿体無いですよね。

天野 歳を重ねてもそれ相応のルックを受け入れることがなかなかできないでいる女性って多い感じがします。

そんな中で私が雑誌でお伝えしたいのは、女性が年齢をちゃんと受け止められるメッセージ。それぞれのキレイを提案することなんです。

美的グランの読者は大人の女性なので、例えば歳を重ねるにつれてまぶたや唇で目立ってくる色素沈着やくすみなどでも、いかに隠すかを提案する方法もあるかもしれませんが、それが本当にお悩み解決になっているのかというとちょっと疑問に思えるんですよ。

方法だけじゃなくって吉川さんがいつもおっしゃっているような、色素沈着やくすみを受け入れて活かすメイクみたいな発想は、その世代を否定せずにポジティブにエイジングに寄り添えるので、そういう考えやそれに沿った方法をどこかで待ち望んでいるのではないかって私は思います。

なぜなら私も経験してきましたが、みなさん大人世代の女性たちは、エイジングで変化していく自分に自信をなくして、どうしていいか迷ってしまうことが多いと思うから。

そんな女性たちに自信を与えてあげるメッセージは、お手入れと同じくらいに大切だって思います。

意識がすぐに変わるのは難しいかもしれないけど、少しずつね。

自分の顔が好きになるメイクでテンションを上げる

吉川 そんな天野さんが自分のメイクや美容でこだわっていることってすごく興味があるんですけど、教えていただけませんか?

天野 普段メイクをするときに大切に考えているのは眉ですよね。

髪の色に合わせて眉の毛の色をほんの少しソフトにしているのがこのFUJIKO-MAYU-TINTチョコレートブラウンです。自然に染めた感じの眉が簡単に出来ちゃうので気に入ってます。

そして眉は線で描くんじゃなくって影を入れるようにして形を自然に整えています。このSUQQU 3D コントロール アイブロウ 01 カーキは、赤みを強める茶と抑えるカーキ、明度を調節できるライトカラーをバランスよく合わせることで、デリケートで自然な影色を調節できるんです。

こんなふうにすると、まるでメイクしてない眉みたいな感じに自然に整って、メイク顔というよりは、自然のままで綺麗、みたいなイメージになるんですね。

最後はchiccaのハーフサイズビューラーでしっかりとまつ毛を根元から上げてから、ぽってりしないで自然に仕上がる&beマスカラで、目をぱっちりさせちゃいます。

シンプルなメイクなんですが、特に肌と眉、まつ毛にこだわることで、私は自分の顔を大切にするという気持ちになれるんです。

時々仕事が立て込むことがあるんですけど、だからといって構わないみたいな感じになるのは、自分のテンションも下がるので、そういう時こそ自分には手をかけてあげるという気持ちがあります。そうすると疲れてもテンションを上げて頑張ることができるんですよ。

わたしにとって美容は自分の心をアップさせてくれる、そして前向きにさせてくれる大切な原動力なんですね。

Photos :  Yasuo Yoshikawa

インタビュー・文 : Yasuo Yoshikawa

取材を終えて

After the interview

chiccaが始まる時からのお付き合いで、もうかれこれ10年以上になるのですが、変わってないというか、むしろ今の方が若々しくピュアーな感じがする天野さんなのですが、見ていると、大人が大人らしく振舞う必要も若さに憧れる必要もなくって、その時々を等身大の自分らしさで最高にメンテインしつつ生きているような感じがするのです。それって、これから先の美容が女性たちに伝えて欲しいって僕が思っていることに通じるなって思いました。

そんな天野さんが『奇跡の62歳』って言われて、『それは奇跡ではない』という思いで書かれた著書『何歳からでも美肌になれる!』では、奇跡ではない実践がストレートな言葉とともに丁寧に書かれています。その紹介をweloveでしてますので是非読んでみてくださいね!

 

吉川康雄