from Japan

女性の個性に味方したい!

冬木慎一 ヘアーメイク

▼Profile

冬木慎一 Shinichi Fuyuki
東京をベースに様々なビューティー誌やタレントを手掛け、幅広く活躍するヘアーメイクアーティスト。個性をひきだしつつも自然な美しさを引き出すヘアーメイクで数多くのクライアントを持つ。
都内有名店で14年勤務アートディレクターを経て、2015年にヘアーサロン“Sui”をオープン。サロンワークでは、痛まない微酸性カラーHIKARIトリートメントSUGAMIストレート、など髪に痛みのない施述にこだわり、髪を健康で綺麗に育むことをコンセプトにしたヘアスタイルを提案しています。

 僕はいつも自分にはない特別な魅力を女性に感じつつ仕事をしています。

彼女らが気持ちよく撮影に向かえるように。サロンを後にできるように。

緊張感を和らげるお話しをしながらも表情や仕草を観察してしまう。

僕のクリエイティブはその人のもっている美しさを考えることなので。

冬木慎一

ヘアサロンでやりたいこと

吉川康雄 冬木さんとは日本での撮影で、時々ヘアーを担当してもらっていますが、ヘアサロンもやっているんですね。

冬木慎一 表参道のヘアーディメンションというヘアサロンで店長をやっていたのですが、倒産してしまって、そこのメンバーと一緒に始めたのがこのsuiなんです。

吉川 90年代、スターを担当していたカリスマ美容師のテレビを見ましたが、そのカットテクニックがすごくてびっくりしたのを覚えています。ヘアディメンションはそういう人たちが作ったブームのトップの場所ですよね。

冬木 カリスマ美容師が作り出したヘアサロンブームは、ヘアーカットの技術を高めたとは思うんですけど、一つのヘアースタイルを量産するみたいなお店を、一気に広げたっていう感じです。

吉川 80年代の「松田聖子ちゃんカット」はまさにそれですね。僕はすごく不自然なスタイルだと思ったけど…。そのあとのカリスマ美容師のカットの進化はすごかったと思います。

冬木 それまでのパーマの“作った感”から、カットだけで自然に仕上げる感じにトレンドを変えるほどの影響力があったと思います。

吉川 ナチュラルになりましたよね。あれを見たときに、「あっ、やっと髪型が人に似合うようになってきたな」って思ったんですよ。

それまでって、ヘルメットをかぶったみたいなのばっかりで。

カットテクニックが、ヘアスタイルを作るんじゃなく“人に似合わせる”という考えになり始めたように思います。

冬木 ニューヨークだと、流行りってどんな感じなんですか?

吉川 流行っても街の風景が変わるほど全員が同じ感じのヘアースタイルとかっていうのはないですね。

冬木 ここ、表参道だと、大体、似た感じになりますよね。

吉川 ニューヨークには流行に流されないオシャレな人たちがちゃんとたくさんいるんですよ。その人たちは、取り入れるけど、それ以上は入れない自分という線をはっきり持っている。ファッションは結構派手でも、昔ほど厚化粧を好まなくなったとか、素肌っぽくさりげないみたいな傾向はありますけどね。

でも全体で見たら、そういう人ばかりじゃなくって、普通に“オシャレが一番大事じゃない”人たちもたくさんいて‥。

そういう人たちはどうでもいい格好をしているわけじゃなく、普通におしゃれのベーシックになっているラルフローレンのようなアメリカントラッドで、それはそれでお洒落ですよね。

カリスマブームが終わって、カリスマ美容師という言葉も消え、ヘアサロンもガラッと変わりましたけど、そこまで変わる理由は?

冬木 日本ではメディアもヘアサロンも新しいものにビジネス価値を見出すから古いものが消えていきがち。流行がそれほどまで重要に影響するということかなあ。もっと大切な本質を考えなきゃって思うんですけどね。

そんな表参道という場所ですが、ずっと昔からかたくなにしっかりとやっているヘアーサロンもあって、そういうのはカッコいいなあって思うんです。

ニューヨークの話に出てきたような“ブレないオシャレ”っていうものを確固として感じるし、自分がやりたいものだから。

ただ東京って、そういうことがあまりクローズアップされず、流れているファッションの方がいいみたいな感じになってますよね。

日本のすごくいい文化を大切にしないで新しいものに飛びついてしまう感覚にすごく似ていますよね。

吉川 冬木さんにとってブレないって、どんな感じですか?

冬木 環境は変わって流れていっても、ライフスタイルの考えや美意識はしっかりと持っている。その価値観できれいを楽しんでいる感じ。

女性を綺麗にするインスピレーション

吉川 女性と仕事をする時ってどんなふうに進めるのですか?

冬木 僕にとっての髪やメイクは、女性のなりたい印象に近づけるものだから、まずはお話しして、そこからスタイルを想像して作り出していきます。

その仕草、髪の触り方、表情からもインスパイヤーされます。

その人らしさを活かすことで個性的な魅力を引き出せると思うからです。

例えば15年くらいお仕事をさせてもらっている山田優さんのパーティーの時の話でいうと、ファッションが大好きな彼女に、よりファッショナブルなヘアーメイクを合わせるよりも、彼女の内面の優しさだったり、美しさを出してあげたいなって思うんですよ。

吉川 “洋服に惑わされない”っていうことですね。だから冬木さんのヘアーは全体にバランスが取れていてさりげない?

冬木 そこは大事にしているところで、洋服はもちろんですが、ヘアーやメイクよりもその人が立ってほしいなあって思っています。内側から出るパーソナリティーが一番の魅力だと思っているので。僕は個性がすごく好きですね。

吉川 彼女はきっとそこをキャッチしてるんですね。

だけど15年もやってきたら、行き詰まってきちゃうこともありませんか?

冬木 行き詰りますよね〜。だから僕は、ただ相手の考えに合わせるというよりは、お互い走っていっているランナーのような関係でありたいなあって思っているんですよ。

たとえば、流行もそれにともなうアイデアも常に当たり前に変化していくわけで、それは僕にとっては“今はこう思う”っていうくらいのものなんです。

一年後には自然に変わってるじゃないですか。それでも何かで繋がっていて一緒に仕事をしているわけだけど、お互いに自然に変化し続け、それを楽しんでいるっていうのが、ずっと仕事を続けられるんじゃないかなって思います。

だからいつも仕事をするとドキドキしますよね。

吉川 わかります。

冬木 タレントさんが年齢を重ねていく中で自分がおつきあいさせてもらえるというのはいろんな勉強になりますよね。

その中で、ヘアーとともに大切に感じるのは肌なんですが、吉川さんの本にある“ツヤ肌”のお話し、僕もずっと同じふうに考えていたんですよね。

僕がそれまで見てきたメイクは、すごく盛っていたり、陶器のように作り込まれた肌ばかりで、「これが本当にいいんだろうか?」ってずっと思い続けてきたのです。

いまはいろんなプロダクトに出会って、やっと僕の感じてきていたようになり始めているなあって思っているんですよ。

僕は髪と肌の艶の質感に、活き活きとした生命感と美しさを感じますが、特にお風呂上がりのような瑞々しさには、なんとも言えない色気があると思うんです。完璧にこだわりすぎないリアルさを作り出すことが、より人を魅力的に見せると思うのですが、そんな僕は、いま、こんなプロダクトを使っています。

髪にツヤを与える『モイバームウォークインフォレスト/LebelMoii Balm walk in forest / Lebel』は、髪の毛に艶の毛束感を出すので、まるで濡れたような質感を作りながらもスタイリング出来るから重宝しています。

またメイクではみずみずしい肌作りが大切ですから、『ポール&ジョー ラトゥー エクラ ファンデーションプライマー N』を目の下に使って、クマを色で飛ばしてから、潤い感を『Etvos ミネラルUVグロウベース』で作り出します。

そして、『CHICCA ソリッドファンデーション』で肌色と肌の質感を整えます。

でも、こんなツヤ感を何十年も前から見つけてやってきた吉川さんはすごいですよね。

それをアメリカで一番最初にやった時はどうでした?

吉川 うん。凄かった。ほかの人がやっていることと全然違っていたから。

それを受け入れてくれると思ったからニューヨークに行ったのだと思います。

表参道というこだわり

吉川 冬木さんにとっては表参道という場所に何かこだわりがあったんですか?

冬木 奈良から出てきたときに、第一線で勉強したいっていう気持ちが強くありました。

それがここだったんですが、今では表参道は第二の故郷みたいになってきましたねえ。店を出すのは絶対にここって考えていました。

僕はオーベルジュみたいなものが好きで、環境のいいところでいいものを作りたいっていう考えがずっとあったんですね。

ここは表参道でもちょっと入った静かなところで、感度の高い地元のお客様が多くいらっしゃいます。

だから量産するというよりは、できるだけ新しいものを発信させてもらったり、クオリティの高い仕事でお客さんを返すことで、この土地に根付いた美容院でありたいなあって考えています。

善光寺にて・渋谷区神宮前表参道

吉川 いろんな世代の女性たちがいらっしゃると思うのですが…。

冬木 70代のあるお客様がまずおっしゃったのは “美しくなりたい”でした。

うちのサロンは髪を痛めないでデザインすることにこだわっているので、その方も日々トリートメントやヘアカラーリングをしているのですが、そのかいもあって、ただもう活き活きと美しい髪なんです。今ではお手入れのためにここに通うのが日常の楽しみになっているようで、それは僕の楽しみでもありますね。

女性の30代は体質や体型が変わっていく時期なので、それに合わせたメンテナンスやアドバイスとして髪やメイクやボディ、全ての美容をここで楽しく取り入れて頂けたらって思っています。

あとはお母さんに連れられた5歳の子がティーンエイジャーとなって、女性らしくなってきたりとか…。

それぞれの人生の時になにかお手伝いできるという楽しさは美容師としてありますよね。

これからのビジョン、夢

冬木 僕は人に育ててもらったので、ちゃんと人を育てるということが好きなんですね。

そして徐々に人が増え、場所も大きくなっていますが、お店をたくさん持ちたいとかそういう夢はなく、“量産しないビジネス”を基本に、今のメンバーの規模で、レベルをちゃんと上げていきたいと思っています。

ただ、プロダクトは作りたいっていう夢がありますね。

自分が使うヘアープロダクトは、納得できるものを作って使いたいという風にずっと思ってきたので。

吉川 プロダクトを作るにあたっては何か考えやこだわりがあるんですか?

冬木 僕の家は代々農業をやっており、叔父と叔母は自然の中で仕事をしていたので、それに対する実直さとリスペクトを見て育ってきました。

そんな日本の農家が作る農産物を成分に、プロダクトを作ってみたいな、なんて思っています。

吉川 冬木さんの育った環境から考え出されたものなんですね。

冬木 女性の持っている美しさを引き出すには、優しくデリケートな成分であることはとっても大切だと思うんです。

僕が何を作れるのか?自分自身にワクワクしているんです。

吉川 夢が実現しそうになったら報告してくださいね!

Photos :  Yasuo Yoshikawa

インタビュー・文 : Yasuo Yoshikawa

取材を終えて

After the interview

美容への考えが共感できることが多い冬木さん。彼の年齢の頃には日本を飛び出してニューヨークに行ってしまった僕とはまた違って、しっかりと東京、日本に根付いてこういうメッセージを発信していこうというのを感じました。僕とは全然違ったアプローチで女性を美しくしている冬木さんのこれからの活動は楽しみです!頑張ってくださいね!
女性の意識が高まるだけじゃなく、彼のように女性を応援する男性がもっと増えてくれるといいなあって勝手に思ってしまいました。

吉川康雄