from Japan

私だからできることを探すのって楽しい

本野沙弥 モデル

▼Profile

本野沙弥  SAYA HONNO

ミス・ユニバース ジャパンへの出場をきっかけに、保育士からモデルに転身。177cmの長身を生かしコレクションのランウェイを中心に活動するほか、雑誌や広告などでも活躍中。

公式インスタグラム https://www.instagram.com/sayahonno/

 

ドラマチックではないところが個性

吉川康雄 本野さんとは、撮影モデルのキャスティングで初めてお会いしました。僕が探していたのは、ドラマチックじゃない人だったんです。本野さんはふっと見過ごしてしまいそうな静かな印象だけど、ちゃんと見ると和顔の中にも今っぽさを感じて…。

繊細な雰囲気が、すごくいいなと思いました。 

本野沙弥 ありがとうございます。私もそれを強みに変えていけたらなと思います。

吉川 本野さんは海外にも行かれてますが、インターナショナルでの日本人モデルのイメージって、切れ長な目で、おかっぱみたいな感じが多いですよね。

本野 コレクションシーズンのショーを見ると、アジア人は決まったタイプの人が多いです。仕事でヨーロッパに行ったときも、毎回「前髪をぱっつんに切っていいか?」って聞かれて。本当にそういうことが多くて、それがまだ日本人のイメージなのかなと……。

吉川 ある意味、すごくステレオタイプですよね。情報はグローバルっていいつつ意外とグローバルじゃないから。例えばニューヨークで“個性の多様化”みたいなメッセージを世界に出しても、結構そこにいる人で表現しているだけで、情報の伝わってこない日本とかのことってなると、かなり差があるなって感じます。それが世界に発信されるわけだから、僕は本野さんみたいなモデルさんたちが何度も向こうに行って、前髪をパッツン切らせずに、今の日本を見せていくことは大事じゃないかなって思う。

本野 確かにそうですね。なんでも1回で諦めてしまうと、そこで終わってしまうし、頑張ったら、求められるものも少しずつ変えていけるように感じます。

吉川 世界的には、スーパーモデルみたいな人たちの代わりに、もっとリアルなキャラの女性たちがどんどん出てきているわけから、日本だってそういう魅力を発信していけたらいいですよね。そろそろ今の日本の女性たちが新しいルックとしてインターナショナルに伝わってほしいな。

本野 日本人は外国の人には出せない雰囲気を絶対に持っていると思うので、わたしもそれをもっと世界の人に見せれたらいいなって思います。

自分は自分でいいんだ

吉川 モデルという自分の仕事については、どう思いますか?

本野 2年前ほど前から始めたんですけど、その頃はオーディションに行っても、人と比べることが多かったんです。自分はここが劣っているとか、「あの子に近づけたら、ああいう仕事が取れるんじゃないかとか」と思ったり。

そっちに寄せてオーディションに行ったりしていたんですが、それをしてしまうと本当の自分ではないし……。しかも、相手にも見抜かれるから、なかなか上手くいかなかったですね。

そんなタイミングで髪の毛を切ったことが、自分が変わるきっかけになったかな。

吉川 僕が初めてお会いした時は、もうこのくらいの長さでした。

本野 その頃は、気持ち的にもだいぶ吹っ切れていました。

それも美容と関係していると思うんですが、自分の外側が変わると内側が変わるし、逆もしかりで。少し自信が持てて、自分は自分でいいんだと思えるようになりました。

吉川 僕の場合、メイクアップアーティストを始めた頃と今とで一番変わったのは、昔は「このモデルをこうしてやろう」とか「この子はこうしたほうがキレイ」みたいにイメージや先入観が先行してたんですね。でもそうすると、自分の思い描いた通りに仕上がらないと不安になったり、失敗だったかもと落ち込んだりする。そしてせっかく来たモデルさんをダメにしちゃうことも多いかもって思うようになって…。

それが、目の前にいるモデルを見て「あ、ここがキレイだな」って相手を一生懸命受け入れるようにした時から、自分の思いをもっと自然に表現できるようになった気がします。本野さんの”自分らしさを認める努力“と僕の作り手としての考えの変化って、接点がたくさんあるように思います。

本野 もともと保育士として働いていたので、「私なんかがプロの人たちと一緒にできるはずがない」という勝手な思い込みがあったんです。でも、色々考えるよりも、まずは自分が自分を認めて肯定しないと、前に進めないなと。洋服を着る場合も、まず自分が似合っていると思わないと始まらないと思うようになって、今は自信をもってやっています。 

吉川 僕もメイクしていても、人と比べないことって大切だなって思います。本野さんが自分のことを認められなかった理由はなんですか?

本野 周りのモデルさんは、肌がキレイとか、髪の質もいいとか、プロポーションもいいとか、全部ですね。

吉川 本野さんの顔は、すごく特長がありますよね。ドラマのない個性がある。

本野 最近そう言っていただけるんですが、自分ではずっとすごくノーマルだと思っていて、何もないって思っていたんですよ。だからそれがどこなのかイマイチ…、ちょっと迷っているんです(笑)。

吉川 そうなんですね。でも一生懸命考えて、わからなくても、うまく出せなくても、仕事としてはいいかもしれないですよね。どっちにしても、それをキャッチできない人と仕事した時はそんなの出てこないんだし、本野さんがいてくれるだけで、そこにあるものだから…。

普通にしてる時、すごくきれいですよ。

本野 すごく嬉しいです。前は服をきれいに見せなきゃとかばっかり考えていたんですけど、自分というものがありつつ、その仕事を大事にできたらって思っています。

私だからできることって絶対あると思っているし、それを探すのは楽しい。そう考えたら、自分はどこに行けるんだろうとワクワクしています。

自分の思いを伝えるのって大事!

吉川 最近、印象に残った撮影はありますか?

本野 あるメイクさんに「ただモデルさんとしてお化粧するのではなく、その人のパーソナルな部分を感じるような仕上がりにしたいから、いろいろなお話をして、あなたのことを知りたいんですよ」と言っていただいたんですね。そのとき自分も一緒に仕事をしているんだな、という一体感を感じました。そういう、現場でみんなで作り上げている感じが楽しいです。

吉川 モデルを始めたのは決して早い方じゃないと思うけど、これから先もモデルという仕事を続けていきたいのか、それともモデルの仕事を通してやりたいことがあるのか、どうなんでしょう?

本野 自分を最大限に出せるのはモデルという仕事の良い面だと思うので、楽しいです。その一方で、保育士をしていたこともあって、たびたび耳にする虐待のニュースが気になって……。虐待を減らすには、親同士が相談する場やコミュニケーションを取り合える場があれば変わっていくのかなと思い、保育系のホームページを立ち上げる準備をしています。発信することで、もっと大きな力に変えられたらいいですね。

吉川 全然違う二つのキャリアが消えないでちゃんと残っているってすごくいいですね。でもそれがどううまく結びつくのかすごく興味が湧きます。これから楽しみですね。

本野 それと海外にも行きたいです。違う自分も発見できるし、絶対に進化できると思うので。

吉川 僕も海外に行ったのは、日本に不満があったからというよりは、どちらかというと、海の向こうには何があるんだろう的な感じがあったかもしれないですね。

本野 中国に撮影で3カ月ぐらい滞在したことがあって…。

吉川 どうでした? 

本野 いちばん感じたのは、自分の主張をしないと仕事はできないなと。海外の人と仕事をすると、意見のない人は排除されるというか、対等に意見を言い合えることは、どこにいても大事だなと痛感しました。

日本も、もっとディスカッションできる環境や人間関係が増えれば、より良いのになあって今は思います。

吉川 日本人は、知らない人と話すのが苦手かもって思うんですよ。

日本という同じ文化の中で育つから、他人に対しても“みんな価値観も同じように感じるはず”って思っているような。だから本野さんのように、日本で育った人がどんどん海外に行って、海外ってこうなんだと、少しでも多くの人が経験することは、とってもいいなって思います。

本野 私の拙い英語でも、頑張って話そうとすると、海外の人は絶対に待って聞いてくれるんです。「あなたの言葉で伝えて欲しいから」と。そういう風に、相手の言葉を待つ余裕があるところも見習いたいですね。海外に行くたびに、世界が広がるのを実感しています。

 

メイクは自信を後押しするひとつの要素

吉川 普段はメイクしますか?

本野 RMKのリキッドファンデーション。色々な現場でメイクさんが使っているのを見て、自分に一番合っていそうだなと。

吉川 ファンデーションは大切ですよね。が仕上げた今日のメイクも、肌だけを仕上げた感じ。ちょっと物足りないくらいの超シンプルな感じでも本野さんは絶対いい感じになるって思ったので。

本野 ありがとうございます。リップは普段はシャネルのこの色を使っています。

吉川 シンプルなメイクに合わせたら、本野さんのちょっと古風な雰囲気とマッチしていい感じそうですね。

本野 あまりゴテゴテしたのが好きではないので……。私にとってのメイクは、それをすることで自分にちょっと自信が持てるようになる、そういうひとつの要素です。

そしてこれはネイルオイル。すごくいい香りですよ。

これも撮影で使ってもらって、それから大好きになって。

吉川 指先って乾燥するからオイルで香りがいいっていいですね。

本野 香りといえば、このフレグランスは、母から誕生日プレゼントにもらって以来、ずっと愛用しています。香りが強く残りすぎないところが好きですね。

吉川 優しくてフェミニンな匂いですね。清潔感があるっていうか…。

本野 時間が経って残る香りはさらっとしていて。

吉川 このオイルはマッサージ用ですか?

本野 そうですね。マッサージ用オイルリファのマッサージ器です。

対でも小さいからどこにでも持っていきます。

吉川 これ効きます?

本野 毎日やっちゃダメみたいですけど結構使ってます。リンパとかの流れを良くするのにいいんですね。ゴリゴリっていう強さはないんですけど、私にはちょうどいい感じなんです。

吉川 こういうのが最初に出てきたときには、その形にびっくりしたけど、今は本当にみんなよく使っているヒット商品ですよね。いろんなサイズもあって。

本野 ホントそうですよね。現場にも持っていってメイク前にやってたりしますよね。

あとはお風呂でとか。

気分的にリフレッシュしたいときは、ちょっと落ち着くような喫茶店に行って本を読むのは好きですね。

それと時々、ピラティスにも行きます。鍛えるということもありますが、1時間じっくり自分と向き合って体をほぐすと、気持ちがすっきりと楽になるので。

あとは書道も無心になれるから好きです。

吉川 ぜんぶひとりでやるものばかりですね。

本野 一人の時間がないとダメなタイプなので、日々の生活でもそこは大切にしていきたいですね。

Photos / Interview :  Yasuo Yoshikawa

Text : Tomomi Suzuki

取材を終えて

After the interview

本野さんが笑うととっても可愛いらしくて…。

リスや小鹿のような可愛い小動物みたいに。

きっとそのつぶらな目がいいんですね。

見たことないような感じはしないけど、モデルとして、とっても新鮮だなって感じるんです。

これからの活躍を応援させてくださいね!

 

吉川康雄