コロナ禍での変化
吉川康雄 島村さんは2つの会社を経営されているそうですが、コロナ禍で仕事上の変化はありましたか?
島村美緒 私がコロナで一番変わったのは、それまで手がけていなかったトップシェフたちのマネジメントをするようになったことですね。
吉川 レストラン業界はすごい打撃を受けましたよね。
島村 ええ。お店は閉めなければいけない、でも家賃などの固定費も支払わなくてはいけないで、トップシェフが軒並み苦境に陥ったわけです。彼らが自分の将来に希望が持てなくなったのを間近に見て、これは何かサポートしてあげなければと。
吉川 なるほど。
島村 例えばメディアに出てもらうとか、彼らの認知を上げていくことで、日本の食の世界を守っていくことができるかもしれない。飲食業界は世代交代が進んでいないので、若いシェフたちが世に出るサポートができたらなとも思っています。それからこのコロナ禍で、大きな資本の難しさをすごく感じました。私たちのような小さな会社は、それほど固定費はかかりませんけれど、大資本が出資した有名なレストランがあっという間に閉店したり。大きな組織がものすごく影響を受けましたよね。
吉川 アメリカではレストランは再スタートし始めていますが、コロナの影響で生活保護を受けている人が増えて、中途半端に働くと補助金が出なくなるからっていうことでレストランを支える人手が不足してフル稼働できないところも多いみたいで……。コロナの影響は思ったよりも複雑だなあって思います。
ちょっと話は変わりますけど、コロナで外に出かけない生活になって、自分の時間が増えている割には、生活のクオリティについてはなかなか話されないですよね。
島村 そこと生活が豊かになることがリンクしてないですよね。
吉川 リモートワークが普及していくのなら、窮屈に感じている人なんかは無理して東京にいる必要あるのかな?って、そういう話が出てこないのが不思議でした。島村さんはどちらにお住まいですか?
島村 つくばの実家と東京の家を行ったり来たりしていて、週の半分は東京で仕事に集中して、週の半分はつくばでリモートワークをしながら子どもと過ごしています。
吉川 僕もニューヨークと田舎に家があるんですが、気分転換になってすごくいい。自分の好きなところに居れるとインスピレーションが得られますよね。簡単にはできなさそうにも思えるけど、考えるいいチャンスにはなりそう。
島村 私はシングルマザーで出産後はずっと実家にいたんですけど、ずっとそれまで東京で暮らしていたので、外資系のブランドに再就職したんですが海外出張が多くて。子どもと一緒にいられなかったので独立したんです。今は子どもを親に半分くらい預けて実家と東京を行き来していますが、親も孫と一緒に過ごせることが幸せみたいで。もうここは甘えたほうがいいやと。
吉川 二拠点生活も、工夫すればできるということですよね。
島村 私は子どもを産んで腹が決まったところがありますね。育てていかないといけないし、宝物ですから。一人ではできないですし、今では親も幸せそうなので調子のいいようにやってるだけなんですけどね。あとは、周りから何を言われても気にしないくらいの鈍感力も必要だと思います。
自分からマインドセットを変える
島村 会社経営と子育てに追われている間に、もうひとつ会社(プレミアムジャパン)を買ってしまって。
吉川 会社が二つもあったら相当な仕事量でお忙しいと思いますけど。
島村 サポートしてくれる人を見つけます。「この人はいいな」と思ったら、どんどん声をかけるんです。
吉川 一人じゃできないというのが前提にあると、人を大切にできますよね。
島村 自分一人ではできないですからね、スタッフには感謝しています。
吉川 島村さんとお話ししているとストレートで理解しやすいなって思います。きっと周りの人たちにも気持ちが通じやすいでしょうね。
島村 アメリカの会社に長くいた影響なのか、ストレートというのはよく言われます(笑)。あとは人の悪口を言わないことは心がけてますね。
吉川 人の言葉を否定しないとか、悪口を言わないとか、そういうことを自制している人って意外と少ないと思うんです。
島村 私は会社を2つも経営していて、シングルマザーで子どももいて、考える時間もないのでひたすら邁進しているだけなんですけど。でも私ぐらいの年齢になると、周囲にはうつ病みたいになる人もいれば、すごく幸せな人もいて、それって自分の考え方次第だと思うんです。自分が「人生こんなはずじゃなかった……」と思っていたら、絶対に幸せにはなれない。そんなこと考えていないで、自分でマインドセットしていかないと先には進めないですよね。
吉川 自分で結果を選べるわけではないですからね。
島村 本当に、やってみなければわからない。私もPR会社を始めて、まさかシェフのマネジメントをやるとも思っていなかったですし、メディアを買うとも思っていなかったので。『プレミアムジャパン』は知り合いが立ち上げて、スポンサーが撤退して続けられなくなった時にたまたま買ったんですけど、人との出会いというのは色々な影響があるんだなと思いました。
吉川 人との繋がりをきちんと持てることも、大きな才能のひとつですよね。
島村 悪口を言う人は私の価値判断とは違うので、距離をおきますけどね。
吉川 そういうスパッとした感じ、男前ですね。
島村 「仕事の時はオジサンだね」ってよく言われます(笑)。フェミニンなスタイルの服とか好きで着ますけど、それと中身は別の話だから。
吉川 そのユニークな組み合わせがまたいいなって思うんです。中も外も女性的というのもありですけど、人はそうとは限らない。
大人のキレイとは
島村 日本では歳を重ねても女性がきれいでいることが、だんだんプレッシャーになってきますよね。最近はオンライン会議が多すぎて、目が腫れて大変(笑)。このコロナの出掛けない時代にキレイでいるって、至難の技だなって。私は涙目なのでアイメイクが落ちしてしまうんです。とはいえ、自分に合うコスメを探す情熱もなくて。
吉川 情報が多すぎますしね。そんな中で何がベストかなんて、考えるだけでも疲れちゃいそうだから、たまたま出会ったものの中で自分が“これだっ!”って思ったものでいいのでは。スキンケアも自分の肌に悪い反応さえ起こさなければ、自分の価値基準が一番大切かと思うんですよ。普段はどんな化粧品をお使いなんですか?
島村 普段のメイクはBBクリームとこの「ミラノコレクション」のフェイスアップパウダーだけで完了です。「ミラノコレクション」は崩れないと聞いて使い始めたんですけど、本当にヨレないし崩れなくて、キレイに仕上がります。
吉川 こちらは見たことないものですが、どこのものですか?
島村 私が以前PRを担当していた、ギリシャの「アピヴィータ」というブランドのフェイススクラブです。残念ながら日本からは撤退してしまったのですが、これを使うとお肌がツルツルになります。あと私が最近気になるのは、首ですね。首が歳とってくるんです。
吉川 首と顔の一体感を考えてメイクすると首が悪目立ちしにくくなると思います。例えば島村さんは、首と比べると顔の赤みが強めだから、その赤みを抑えて首の色に近づけると自然に一体感を感じる仕上がりになります。
島村 だんだん目が下がって、垂れ目になるのはどうしたらいいですか?
吉川 僕の母は、目のたるみがすごく下がってきた時に切ってすっきりとしましたが、島村さんの目は優しそうですごく可愛いと思います。年齢による変化は、ある程度のところまでは、魅力的なものとして見れると思うんです。
例えばほうれい線とかもある日突然出てきますよね。でもほうれい線って、笑顔には邪魔にならないんです。とある可愛らしい顔立ちの大人の女優さんとお仕事をした時に、笑顔がとっても素敵だなって思っていたんです。でもメイクしていていろんな表情を見ていると深いほうれい線もあって。つまりは、どうやってそれを魅力に変えていくかですよね。
島村 最近はプチ整形とかみんなやっていますけど、やり始めたらきりがないですもんね。
吉川 どこまで自分で工夫できるかですよね。皮膚がかぶさってきたり、自分ではどうにもならない時は、上手なお医者さんのところに行くのもいいかもしれない。肌質の変化については、いつも出来るだけ健康な素肌のようなイメージに近づけること。何歳になってもそれが一番大事で、その時その時のいい肌状態に近づけることが大人のメイクでは何より大切だと思います。
島村 日本のメイクだと、若く見せるのがポイントみたいになっていますけど、若く見せても若くはないから。
吉川 若く見せるために自分の肌を何かで塗りつぶすのは厚化粧の負のスパイラルだと思います。
島村 大人の女性がキレイであることにこだわるのは、全然悪いことではないですよね。でも日本の場合は、それが若く見えることにベクトルが向いているなって。
吉川 もっと気持ち良く年齢を重ねられる価値観が持てるようになれたら良いですよね。今日は僕がメイクをさせていただきましたけど、いかがでしたか?
島村 溌溂とした印象になりました。アイメイクも、もっと色々されるのかと思っていましたけど、シンプルだったので驚きました。
吉川 島村さんの場合は、目元を強調する必要もなさそうだったので。そもそも、むやみに目を強調する必要なんてないですよね。それよりも自分らしい魅力って考えたら不自然な厚化粧がなくなると思います。
島村 日本人はオリジナリティがないから。
吉川 顔は全員違うんですからね。
島村 最近シワをなくす美容液とか出てきましたけど、本当に効くのかしら?
吉川 本当に効いたらシワのない人がいると思うけど、見たことありません。気をつけつつも、いかに年齢を受け入れて楽しく魅力的に生きていけるかを僕は考えたいなって思います。
島村 コロナの影響で、楽しく生きていくことについて考えさせられたと思います。人それぞれ違うと思いますが、これからも前向きに楽しくいきたいですね。
Photos / Interview : Yasuo Yoshikawa
Coordinate / Edit:Maki Kunikata
Text : Tomomi Suzuki