withコロナの時代、ままならない日常の中でイライラが募り、モヤモヤを抱えている人も多いのでは。そんなとき、リフレッシュのために足を運んでほしい2軒のお茶処をご紹介します。
1軒目は、表参道の「櫻井焙茶(ばいさ)研究所」。
日本茶の多彩な魅力を発信
表参道のスパイラルビルの一角、ガラス扉の向こうにひっそりと佇む「櫻井焙茶研究所」。外の喧騒を忘れるほど静謐な空気が漂う店内では、店主の櫻井真也さんが全国各地の生産地に足を運び、みずからセレクトした日本茶を販売しているほか、併設の茶房でお茶やお茶菓子、お酒を楽しむこともできます。お茶を炒るための焙煎機も置かれ、炒りたての焙じ茶をその奥深い香りや風味とともに味わえるのも魅力。
四季を感じるブレンド茶を提案
煎茶や焙じ茶だけでなく、日本茶をベースに四季折々の国産フルーツやハーブを組み合わせたオリジナルブレンド茶も充実しています。「日本茶でも季節感を感じてもらいたい」との思いから、春には木ノ実やふきのとう、秋には梨や柿をフリーズドライにしたものなど、24節気の暦に合わせた自然素材を日本茶とブレンド。茶葉に香りづけするフレーバードティーとは異なるアプローチで、日本茶の新しい楽しみ方を提案しています。実は店主の櫻井さんはバーテンダー出身。さまざまな素材を調合してきた経験が、ブレンド茶の創作でも役立っていると言います。
日常を忘れるピースフルな空間
黒を基調に随所に銅を取り入れた空間は、にじり口のような小さめのドアや低めの天井、つくばいを思わせる水のしつらえなど、さながら茶室のような雰囲気。クラシカルとモダンが融合したインテリアや、落ち着きのあるライティングも絶妙で、あまりの居心地のよさに時間を忘れてしまいそうになります。
「忙しい日々の中で、ここに来ることでほんの少しでも現実から離れてリフレッシュして、何かを発見して帰ってもらえれば」と話す櫻井さん。昼夜を問わず、一人でふらっと立ち寄るゲストも多いそう。一日を通じてお茶とお酒の両方が味わえるので、お酒を嗜む人もそうでない人も、それぞれにとっての“おいしい時間”を共有できるのも、このお店ならでは。
一杯のお茶がもたらす心の安らぎ
白衣に身を包んだスタッフがお茶を淹れる所作も美しく、その姿には思わず見入ってしまいます。「誰かに淹れてもらったお茶はおいしいですよね。私もスタッフも、お茶を淹れるときは相手のことを思いながら淹れるように気を配っています」と櫻井さん。そんな心のこもったお茶をいただく時間はなんとも贅沢なもの。
とはいえこのコロナ禍、お店に足を運ぶのが難しいという人のために、煎茶や自家焙煎の焙じ茶、季節のブレンド茶などが購入できるオンラインストアもオープンしたそうです。自分や大切な人のために、一杯のお茶を丹精込めて淹れる――。そんなひとときを過ごすことで、自分自身とも向き合ってみてはいかがでしょうか。
Photos / Interview : Yasuo Yoshikawa
Text : Tomomi Suzuki