from NewYork

変化し続けながら面白く生きたい

田原美穂 NY在住マーケッター

▼Profile

田原美穂 MIHO TABARU

銀行員、COACHを経てH&Mの日本法人でメディアマネージャー兼ロイヤリティープログラムマネージャーとして活躍。妊娠9カ月の2020年3月に、カナダ人の夫の転勤に伴いNYへ移住。現在は子育ての傍らFITファッション工科大学のサステナビリティの講義を受講するなど、次のステップに向けて邁進中。公式ブログでは、米国でのマーケティングや子育て情報を発信中。
公式ブログ:https://note.com/mihotabaru

思いもよらないタイミングでNYへ移住

吉川康雄 田原さんは2020年の3月からNYに住み始めたそうですね。パンデミックと重なった、すごいタイミング。

田原美穂 そうなんです。飛行機に乗るときも「ちゃんと飛ぶの?」というぐらい先が見えない頃でした。実家に帰る選択肢もありましたが、育休の1年をただゆっくり実家で過ごすというのは考えられなくて。

吉川 飛行機に乗って、後戻りできない旅に出ちゃいましたね。海外移住と出産は、たまたま同じ時期になっただけですか? こちらで子供を産みたいという気持ちがあったとか?

田原 それはありました。自分の中で、日本の教育を受けさせることにしっくりこない部分があって。大学生の時にNY州立大学に編入したのですが、英語がネイティブ並みに話せないことで自信を失い、ディスカッションで意見も言えないのがコンプレックスだったんです。自分がマイノリティである事も必要以上に感じていました。

吉川 疎外感を覚えるような経験をしました?

田原 はい、友達になるのも留学生の外国人ばかりで。意見があっても現地のアメリカ人の輪の中ではなかなか話せないことが辛かった。必ずしも教育のせいにはしたくはないけれど、子供には多様な人や考え方、多言語でのコミュニケーション当たり前の中で育てたいなって。

もうひとつは、私自身も長く日本で働いてきたので、このあたりで自分の視野をもう一度広げたいという思いもあったんです。アメリカの大学を卒業した後、一度は現地での就職を試みましたが難しく、日本に帰った後で投資アナリストとしてロンドンで働く事ができました。ただ、その時はまだ目の前の仕事で精いっぱいだった。海外で仕事をする事のベネフィットを十分に発揮できなかったと思います。その後、色々な仕事をしてマーケッターとして経験を積んできたので、今の自分が戻ってきたアメリカでどこまで面白い事ができるかを試してみたいと気持ちもあります

吉川 学生の頃にアメリカで就職したかったというのは、アメリカの生活のほうが自分にぴったりきたからですか?

田原 いえ、それが真逆なんです。居心地が悪かったし、アメリカのことも実は嫌いでした。だけど、見たことがない景色を見みてみたいという好奇心があったのかな。日本は居心地がいいし、仕事でも市場や顧客の事が日本人としての感覚で分かる事も多いし、海外よりもバリューが出しやすいと思うけれど、挑戦したかったのかも。でも吉川さんも一緒ですよね?

吉川 大変だからやめればいいのにといつも思っていますけど(笑)。

田原 大変な方が人生面白くないですか

吉川 最近は時々わからなくなります。でも田原さんの気持ちはわかります。

田原 私は先が想像できる人生よりも、面白い人生にしたいというのがあるのかもしれません。

 

新しいことに挑戦して人生を面白く!

吉川 産休前はH&Mでお仕事なさってましたけど、NYのオフィスで働く予定は?

田原 H&Mでの仕事やカルチャー、そこで働く仲間はどの国でも大好きです。ただ、外資系企業で働く日本人あるあるではあるんですが、日本や日本人に貢献できる仕事がしたい気持ちもあって。

吉川 自分が日本人であることって海外にいるほど感じますよね。日本に育ったから、その経験を良くも悪くもここでのことに対して比べますよね。その感覚は大切にしたいと思っているし、伝えたいことも出てくる。ここの人にも日本の人にも。

田原 そうですよね。実はいま、FIT(ファッション工科大学)のサステナブルファッションの講義を取って勉強しているんです。米国のサステナブルブランドの日本市場参入のお手伝いをしたり、逆に日本ブランドの米国市場進出、日本企業や学生達にサステナブルなマーケティングについてのアドバイスなどが出来ればと思って。ファッションにおけるサステナビリティはアメリカのほうが断然進んでいるので、勉強しながら日々の生活の中でも常に情報をアップデートできるのがNYに住んでいる醍醐味の一つですね。

吉川 そんな思いはありつつも、お子さんも生まれたばかりだから、今は子育てで精一杯なのでは?

田原 子育ても楽しいですが少しずつ自分のやりたいことにシフトしています自分の人生を充実させる事で子供にも良い影響があると思うし、その時間を作るためにも思い切ってナニーさんにヘルプをお願いし始めました。

吉川 新しいことやアイデアが一気にきているんですね。大変そう~。ひとつずつ来てくれたらいいのにって思いません?

田原 ひとつずつだと逆に決断できなかもしれません。全部がいっぺんに来たから決めるしかない、みたいな。

吉川 例え前の場所に戻ったとしても、この経験をしたことで、また何かが変わるかもしれないですね。

何かをやめたり、新しいことを始める時って、今までと全然違うことをって思ったりもするじゃないですか。でも僕はそれまでに自分が経験して学んだことはできるだけ活かしていけることをやっていきたいなって思うんです。

田原さんも今までの経験があるから、疫病が大流行している大変な時期にもかかわらず、ニューヨークにきてしまったわけで、きっとここで感じたことは特別な意味があると思う。 

田原 今までの経験を100%活かしつつ、更にそれを進化させていくことが、どこで何をやってもそれが社会に貢献していくことだと思います。

吉川 やるべきことはまだはっきりとは見えていないかもしれないけど、今までの経験もあって次に繋がるようなまだ模索中みたいな……。最大の修行だね。

田原 今までとは環境も生活も180度違うので色んな事がまさに修行です(笑)。

環境の変化といえば、パンデミックと出産でホルモンのバランスが崩れたりしたせいで、髪が抜けたりもして、自分自身のケアも色々考えるようになりました。 

この髪を強くしてくれるっていうオラプレックスのコンディショナーは保湿力がしっかりしている上にシャンプーもモイスチャー効果が高くてWでしっとり仕上がるので気に入っています。

田原 それと日本のバスタブのようなちょっと深いお風呂が好きなので、こういうバスソルトでリラックスしたり。

吉川 ラ·ブルケット、僕も同じのを使っています。香りも肌触りも優しくて好きなんです。

田原 私もここのブランドが気に入って、ボディーソープやオイルも使っていますが、香りがリラックスできますよね。

それとニューヨークってすごく乾燥していませんか? 日本で使っていたボディクリームだとかさかさに乾燥しちゃって……。今はこのラロッシュポゼローションをボディに使っているのですが、これに変えて救われました。

田原 ニュクスのオイルはさらに乾燥しているところに。髪や、体、顔にも使えて便利なんです。

田原 化粧水はこのマリオバデスクです。

吉川 ニューヨークの皮膚科の先生のですね。これもここでは人気ですけど日本には入ってないのかなきっと。

田原 香りも軽くて使いやすいのでじゃぶじゃぶ使っています。

吉川 全体的に保湿重視ですね。田原さんはニューヨークの冬は初めてだと思いますが、もっと乾燥してきますよ。ところ変わればケアも変わりますよね。

 

いま、アメリカにいる意味

吉川 それにしてもパンデミックに大統領選に、僕も田原さんも今アメリカにいることで、なかなか見られないものを見ていますよね。根本的に、その場にいなければわからない事ってあると思う。たとえば何故アメリカ大統領選でトランプが負けたのか。それでもなぜ、トランプがあれだけの票を取れたのか。海外から見るといろんなミステリーがあると思うけど、もっとシンプルなことなのではと、こっちにいると感じるな。

田原 感じることは現地にいないとできないですよね。

吉川 たまたまアメリカの根っこが見えるような奇跡的な時期に居合わせた。ラッキーですよ。

田原 私は今の時期にここに住んでいて、逆にアメリカのことが好きになりました。エッセンシャルワーカーを毎晩拍手で街中の人が褒め称えたり、パンデミックで職や家を失った人を無料の食事配給でサポートする体制とか、どの子供も授業が家から受けられるようにPCの支給が直ぐになされたりとか、凄いと思う場面をいくつも見る事が出来ました。

吉川 トランプさんも、その反対にいる人にしても、どちらも自分に正直。

田原 日本の企業や芸能人は政治的な発言をしないけれど、こちらの人は堂々と言うし、むしろ意見がないと周りからのサポートを得られないという土壌があると思います。

吉川 でもアメリカを語るのは難しいですよね。色々な人がいて、エデュケーションレベルや環境、カルチャーの違いがあるから、一つの国であるっていうのが奇跡的なくらいに感じることがあります。

田原 いい意味でも悪い意味でも、喜怒哀楽がすごくある国。例えば、大統領選でバイデン氏が勝利した日には街中お祭り騒ぎだし、市長の決断に対して不満がある時には市民が集まって署名やプロテストをして決定を覆す事もある。

吉川 美しい意味だけじゃなくいろんな意味でダイバーシティーを感じさせてくれるところ。

でも人疲れもしちゃうから、僕はどんどん人がいない所にばかり行くようになっちゃって(笑)。今住んでる所なんか、山の中の田舎だから、動物以外誰もいないですよ。

田原 どうしてそういう所に住むようになったんですか?

吉川 いつからか「自分にとってもっと気持ちいい生活って何だろう?」って思うようになって、そしたら今のところに数年前にたどり着いて……。インターネットを使えば、どこにいても世界中とコンタクトが取れるし。

田原 それを行動に移して生活されるのはすごいですね。

吉川 人生は短いので、自分がいかに楽しめて生きているかって、大切に考えていて。そしたらこうなってきました。

田原さんは家族構成も住む場所も激変して、しかもコロナで、間違いなく大変な状況だろうけど……

田原 私は今が今後の人生においての転換期なんだと思います。何かに試されている気がする。

吉川 貴重な時間ですね。大変だけど楽しくないですか?

田原 はい。自分の決断次第で人生が大きく変わるから、楽しいです。こういう時にいつも思い出す恩師の言葉があって「運命とは、運に命をかけるから運命なんだ」と。チャンスだと思ったら飛び込んで、それをものにするために行動する。

吉川 川で遊んでいたら濁流がきて、取り残されたような状態だもんね。

田原 戻るのも大変だし(笑)。

吉川 だから流れるままに、なのかな。

田原 このタイミングでアメリカに来たことには絶対意味があるし、これを生かすしかないと思っています。

吉川 最高。後で考えると忘れられない田原さんの人生の瞬間になっていますよ、絶対に。

 

Photos / Interview : Yasuo Yoshikawa

Text : Tomomi Suzuki

取材を終えて

After the interview

アメリカにずっと住んでいる僕でさえ2020年のニューヨークは精神的にキツかった。
物凄い数のコロナの犠牲者、ブラックライブスマター、マンハッタンの大規模な略奪、大統領の交代……。
そんなニューヨークに新たに引っ越してきて出産だなんて、ものすごくパワーがなければやっていけないだろうと、なぜか田原さんが自分のことのようにすごく心配だったのです。
でもお話しを聞いていると僕の方が逆に元気をもらってしまった感じがします。
大変だからこそよりいろんなことを感じながら前に進めるという流れに逆らわない感性はまさしく今の僕に必要でした。

吉川康雄