from Japan

きれいって、全ての女性が楽しめる!

中野亜海 書籍編集者

▼Profile

中野亜海 AMI NAKANO

1981年生まれ、書籍編集者。

中経出版、ダイヤモンド社を経て現在は日経BPに。

メイクやファッションなどの女性実用書、ビジネス書を手掛ける。

本の編集者が心をこめてつくるwebマガジン『本日校了』主宰(https://honjitsukoryo.com/

おしゃれに憧れてるけどそれが一番じゃない人たち

吉川 僕の最初の本、“生まれつき美人に見せる” を一緒に作ってから、あっという間に4年たっちゃいましたね。美容にとって斬新な考えだったようで、すごく注目されました。ありがとうございます。

ところで最近はどんな活動を?

中野 あれからもずっと女性に向けた本を作り続けていますが、最近では神崎恵さんの“この世でいちばん美しいのはだれ?”を4月にリリースしたところなんですよ。

吉川 面白そう!だったら、すごく忙しかったですね。

たまにちょっとはゆっくりとかしないんですか?

中野 めちゃくちゃ本が好きだから、大変ではあるんですけど、

それを楽しめるんですよ

吉川 昔から?

中野 そうですね。でも最初から出版社で働いていたわけじゃなくて、就活ではファッションも好きだったので抑えでアパレルを受けたんですが、結局、出版社はどこも決まらなくて、最初はそっちになっちゃったっていう…。

入って思ったのは“ここは私のいる場所じゃないな”ってことでした。

人気のブランドでかなりのハードワークだったのですが、それが耐えられなくて。周りと自分の、服に対する情熱の違いを感じました。

思い返すと、今の仕事の方が労働時間も長いし、責任もすごいし、仕事としてハードなんですけど、今の方が圧倒的に楽です。

吉川 大変な仕事って、それ自体が自分の癒しにならないとキツいよね。

中野 大好きな服だから! みたいにね。

私は“ファッションに憧れるけど一番好きなのは別にそれじゃない”っていう普通の人レベルだったんです。

だから接客研修の時も、おしゃれな人には売れなくても、一般の人の気持ちはわかるので、そういう人にはよく売れたりはしました。

アパレルで働くほど服が好きではない、いわゆる「普通の」女の子も、みんな自分がきれいになる方法がわかった時は楽しいんだなということは身をもって知りましたね。

吉川 ぼくもキッカをやってきて、そういう楽しみって全ての女性が日常的に必要としてるって感じました。

中野 例えば、インスタとかで“今、この口紅が流行ってます”なんて“話題の色”を見たら、仕事の後にドラッグストアに寄ったりなんて結構誰でもするんですよ。楽しいから。

メイクの良さって、女の子を調子にのせられるところですよね。

外見のことで調子にのってる女の子って可愛くないですか? 自分のことを美人だと思ってない女性でも、歳をとっても、メイクとかファッションって、それをやること自体が心をウキウキさせるんです。

そんなコスメや技をつくりだしているのは吉川さんたちのような美容を真剣に考えている人たちで、普通の人は面倒くさいから、ただそれを享受してるだけなんですけど。

でも、たったそれだけで、十分に心からワクワクするんです。

そういえば、わたし、うちの旦那さんと出会ったころに、ちょうど取材していた吉川さんと神崎恵さんに教わった“魅力をアピールするテク”をデートで試して…。

吉川 それってちょっと攻撃力が高すぎない?

中野 それが心から楽しくて。それを見ていた女友達が、“もう効果十分過ぎてかわいそうだからやめてあげて。”って言いだす始末で…。

吉川 僕と神崎さんの技って足し算するものじゃないと思うよ。ちょっとは引き算もしていかないと激しすぎるよ…。

で、やめてあげたんですか?

中野 いや、ぶじ結婚しました。笑。

吉川 彼、タフっていうことですかね。

中野 いや〜、こういう風にメイクするのも楽しいな〜って思いました。

でもそれって、例えば好きな口紅とアイデアがあればべつにすごい美女に生まれていなくても誰でも楽しめると思うんですよ。顔にも年齢にも関係なく。

でも、ちょっとしたことで、すぐ外見に関する自信って失いますよね。

自分の見た目って、「自信」と「自信がない」のより合わさった縄みたいなもので、自分のジャッジもものすごくコロコロ変わるんです。

私は、「おしゃれやメイクに自信がないし、いちばん好きでもない人たち」の代表として、そういう気持ちがとても分かるんです。だから、そんな人たちのための実用書をつくろうと思っています。

取材したらわたしも楽しい

吉川 じゃあ中野さん自身も、本の取材で知るいろんなプロダクトの情報を楽しんでそうですね。

中野 はい、プロの人たちが持っているたくさんの情報の中から、本に載せるのは「自分が毎日やれそう」というくらいの値段で、簡単にできることを大切にしています。

吉川 そんな中野さんが発見した自分を可愛くするもの、教えてくれませんか?

中野 この日焼け止めの乳液、ラロッシュポゼ“UVideaXL”を愛用してます。 SPFが50もあるのに保湿するんです。日焼け止めって乾いたり、白くなりがちで、メイクと一緒に使うのって結構難しいでしょう。これは伸ばしやすくて白くならない。敏感肌用に作っているので私の肌にはいい感じ。クリームの厚みを感じて保湿感もあるんです。艶が出るので肌をきれいに、若くも見えますよ。これがないと生きていけないです。

吉川 中野さんみたいに透明感のある化粧している人って、ファンデの日焼け止め効果も期待できないからSPF50は頼もしいよね。

中野 ほんとに!

このシリーズのMelt-in creamっていうのが色が消えてなくなるのでいいですよ。今の所、私の中のベストですね。友達へのプレゼントもこれって決めているくらいです。

吉川 こういう見えないこだわりって大切だね。僕も使ってみようかな。

中野 あとはCHICCAの口紅“レッドローズ”。これをつけると唇とのコントラストで肌に透明感を感じます。でも色は自然に馴染む。つかいやすいのでクセになりますね。

プラムネクターもセクシーで好きで、どっちを紹介するか迷いましたがレッドローズは私のベーシックカラーという感じで。

吉川 あれだけ使いやすい色があっても絞り込まれるんだね。勉強になります。

取材の情報で試したくなるテクニックとかは?

中野 この仕事でお化粧を知っていくほどに、自分の技術と楽しく遊べるアイデアがどんどん繋がってきちゃいます。

この前もコシノジュンコさんとお会いした時に、自分なりにアイラインをいつもより太くしようとか、お洒落をモード風にしようとかあれこれ考えているうちに楽しくなっちゃって。コシノさんとお会いすること自体も楽しみなんですが、その前に自分ひとりで盛り上がれるんです。

吉川 僕が本で教えた技を屈指したんですね、笑。そういうのってコシノさんに伝わるでしょうね。

中野 すごく優しい人で気を使ってくれる人だったんですよ……。それなのにあのカッコ良さで。つくづく自分をお持ちだなと感じました。

吉川 素敵ですね。

中野 ああいう風に歳をとりたいです

ちなみに、使ったアイライナーは、台湾の友だちに教えてもらった1028の“infinity longwear”です。

日本には売ってないですけど、台湾のドラッグストアにけっこうどこでも置いてあって、めっちゃ安いですよ。ここのは、アイシャドウもよくて、今はやりのアジアっぽい可愛い感じに仕上がります。落ちにくいので重宝してます。

 

自分が好き

吉川 中野さんはすごくクールに人を観察して分析しているけど、きっと自分にもしてるんでしょうね。

中野 私には二つ年下の妹がいてめちゃくちゃ綺麗なんですよ。いつも隣に美人がいる環境で育って、しかも今の仕事でも、まわりに美人が多いじゃないですか。

吉川 そんな美人たちに対してはどう思うの?

中野 超羨ましい(笑)! だけどどうなんだろう…。

中野 私は美人というのとは違うので、「美人」ということについてはいろいろ考えてきたと思います。

吉川 じゃあ、自分は美人に入ってないんだ?

中野 あっ、私もなかなか可愛いとは思ってますよ! 笑。

吉川 そういう自分に行き着くまでの経緯ってあるんですか?

中野 子供の頃から自分のことは可愛いなって思っていたんですよ。多分それって、私以外の女の子も絶対同じように思っていると思います。

“自分はめちゃくちゃブス”だと、いついかなる時も思っている女の子っていないような気がします。どんな顔の人も、“私可愛いんじゃないかな?”って。そして可愛くないと自分で思うときもあり、そんな時もずっと可愛いって思っているんですよ。

吉川 ちょっとしたきっかけごとに“やっぱり私可愛かったんだな”って納得したり?

中野 そうですね。好きなおしゃれをした時とか可愛くなる本を買って試した時とか、“あ、やっぱり…。”って。だけどそれとは別に、“いつも自分は可愛い”というベースがあるんです。

吉川 それって“自分が好き、大切!”って思う気持ちだよね。

中野 私の高校は進学校だったんですが、端から見ればそこに通う生徒たちは田舎のまじめな女の子に見えるんだろうけど、それはそれでみんな自分のことを可愛いって思っているふうに私には見えました。

でも、育つ過程でいろいろ言われて傷ついたり、それでも私は可愛いと思ったり、自分の新しい可愛さを引き出せた時の楽しさ。そんな「普通の女の子」の気持ちを、私はとても大切にして、尊重したいと思っています。

吉川 そんな中野さんが読みたいって作る本だから、みんなも楽しめるんですね。

 

一番大切なことと…

吉川 中野さんが“一番大切”って思う本の存在って?

中野 とにかく刺激を受けて自分が変わっていくのが好きで、新しいことを知るって“生きてる!”って感じがするんです。だから本を読むって世界中のいろんな人の考えていることが知れるすごい遊びだなって。本を作るのも、同じようにいろんな人の話を聞けるので好きですね。

吉川 じゃあ趣味が仕事?

中野 趣味もちゃんとあって三味線が好きなんですよ。

仕事や日常からちょっと離れた、古いもうひとつの世界を楽しむ感じです。

吉川 三味線って珍しいけど、素敵ですね!

中野 新しい発見が出来るというか。そこから江戸の歴史や日本舞踊まで興味が広がっちゃって…。取材して話を聞くのも三味線を習うのも日本舞踊を習うのもみんな同じ姿勢です。

吉川 趣味も仕事もみんな楽しく自分の中に取り入れているんですね。

中野 私にとって自分を大事にする行為って、いろんな新しい考え方に触れる時なんですね。でも、その時にやっぱり私が可愛ければいいなって思うんです。

 

Photos :  Yasuo Yoshikawa

インタビュー・文 : Yasuo Yoshikawa

取材を終えて

After the interview

“美容のマニアも、そこまでは思わない女性も平等に美容は楽しい”って、そういう中野さんの考えに大賛成です!綺麗はすべての女性に共通する本質だからなんですね。だとしたら、なおさらいろんな美容がなければいけないなって考えさせられました。みんなが楽しくなるいろんな化粧品を作りたくなっちゃいますね。

中野亜海さん独自の“女子目線”で手掛けられた本をいくつか紹介してもらいました。もし読んでなければ、読書の秋にどうでしょうか。

吉川康雄